生徒から「自分たちは恵まれすぎていて社会課題に鈍感だ」と言われたこともありますが、こうした取り組みを通じて、身近な課題から日本社会、グローバルな課題へと目が向く生徒も出てきています。

品川女子学院の起業家教育にある「巻き込み力」の源泉

馬田:品川女子学院では、起業家教育での成果を文化祭で発表しています。その様子を見ていて興味深かったのが、どのチームにも必ず事業パートナーやメンターがいたことです。企業や地域の方々の力を借りるという前向きな考えが根付いているのだと感じました。これも起業家教育の一環なのでしょうか。

:品川女子学院が育てたい能力の1つに、人と協力して社会をよりよく変える「巻き込み力」があります。中等部3年生になったら、全員が「起業体験プログラム」に参加し、高等部では有志として加わることができます。そこで先輩たちの背中を見ているから、自然と行動に移せているのかもしれません。

校外の誰に協力を仰ぐかは、生徒自身が考えて実行します。実際にお願いする際のマニュアル的なものは学校側でも用意していますが、教員が手取り足取り指示するわけではありません。そのため、断られるケースも少なくありません。40社に声をかけて最後の1社でようやく話を聞いてもらえるなんてことは、よくあります。校外の方に失礼がないよう最大限の気は遣っていますが、毎年ヒヤヒヤします。

こうした活動を長く続けていると、社会貢献に積極的でそれが社内の隅々まで浸透している企業があることを実感します。例えば、イオンさんは子ども相手でも必ず話を聞いてくれましたし、ユニ・チャームさんは生理をテーマにしたプロジェクトに複数回試供品を提供してくれました。ポーラさんも機材を貸してくださるなど何度か協力いただいています。

販売場所も事業計画のプレゼン次第で決まる 画像提供:品川女学院
販売場所も事業計画のプレゼン次第で決まる 画像提供:品川女学院

文化祭終了後も継続してサポートしてくださる企業もあり、昨年はマネーフォワードさんが生徒たちのアイデアに伴走してくれました。企業以外でも例えば国立教育政策研究所などの研究所や大学の先生など専門家の方々が力を貸してくださることもあります。年々、協力してくださる方が増え、社会環境の変化を強く感じています。

馬田:起業家は資金調達や採用、営業、組織づくりの場面で必ず誰かを巻き込みながら実行していく必要がある。人を巻き込む力は起業家として汎用的な能力と言えます。

ですが、「メンターをどうするか」は難しい問題だと思っています。起業家教育をしているとき、社会人のメンバーが学生チームに混ざると、みんな年上の意見に従ってしまいがちです。また、銀行やメーカーなど、メンターのバックグラウンドに意見を引きずられてしまうこともよくあります。