・ChatGPT
OpenAIが2022年11月にローンチしたチャットボット。これまでのチャットボット(少なくとも多くの人が抱くそのイメージ)とは、比べものにならない対話能力を持っています。7、8年前のAIバブルで語られたボットの世界観に近づいて来たのではと感じました。日本語と英語で能力に差がありますが、英語では私の高校生の息子の宿題はアウトソースできる気がします。このエリア、周辺プロダクトも含めてまた盛り上がるかもしれません。
2023年のスタートアップシーンや投資環境はどのように変化すると予想しますか。
世界的にはテック市況の状況を反映して、スタートアップの評価額や調達環境は厳しくなると思います。米国では2022年に起こったレイターステージでの評価額の調整が、2023年はシード含むアーリーステージにも、完全に反映されるようになる可能性は高いと思います。
ただマクロ市況は、米国はまだ(執筆時点では)揺れています。テック業界のレイオフのペースを見ていると想像しにくいのですが、米国経済全体では失業率は非常に低く所得も伸びており消費も堅調。このまま本格的な不況に入らず金融政策でインフレを抑えられるか否か、投資家間でも同意していません。マクロで長期的な不況に突入するかどうかで、2023年のスタートアップシーンは変わってくるでしょう。
それにも関わらず日本では、政府の5か年計画に代表されるように、スタートアップ経済が主流化する勢いが加速していて、ドライパウダーが増えてくるのは、ほぼ間違いないでしょう。スタートアップと投資家の需給関係から、米国のアーリーステージに比べて日本のアーリーステージのスタートアップの方が資金調達が行いやすく、高い評価額が付きやすい状況になるかもしれません。これが起こった場合は、投資家も起業家も注意が必要です。レイターステージの各国の市況は、より連動しているからです。スタートアップの成功確率にとってはもちろん、エコシステムの競争力にとっても適切な評価額は必要条件です。2023年は、日本のエコシステム参加者が国外の市況を敏感に観察することが、より大事になると思います。
2023年に注目する・盛り上がると考える領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。
・クライメートテック
具体的な脅威、各国政府のコミットメント、消費者行動の変化(特に欧米)の3つが揃い、産業としての主流化が確実です。その上、技術領域がカーボンキャプチャーからフードテック、核融合まで多岐に渡り、言うまでもなく非常に面白く重要な分野です。日本発のディープテックが、世界に羽ばたくチャンスが大きい分野でもあります。
・ディフェンステック
米国では軍事スタートアップは連邦政府による継続的な投資もあり、一定の存在感を見せてきましたが、昨今の残念な緊張の高まりを受け、さらに注目を高めています。日本の国防費も大幅増額の見込みです。デライト・ベンチャーズは兵器に類する技術には投資しませんが、ディフェンステックはシリコンバレーやインターネットを産んだように、平和目的に利用される技術を生む大きな土台であり、注目しています。
・Web3
NFTの暴落、暗号資産取引所の相次ぐスキャンダルを経て、ブロックチェーンの本質的なユースケースに対する追及が高まっており、さらにスタートアップ投資全体のバーも上がる中、2023年はWeb3が過去のお祭りになるか、本稼働の見込みを見せられるかが、見えてくる可能性が高いでしょう。今のところデライト・ベンチャーズの投資領域ではありませんが、動向には注目しています。