その観点でみると、日本のほとんどのスタートアップのストックオプションは、欧米に比べて発行量が少なく、付与しにくい仕組みになっている。そして、まだ十分に重要なものとして当事者に取り扱われていないと感じる。

日本のスタートアップの多くは、最初の優先株調達の際に、ストックオプションの総量を投資家と約束する。「その資金調達後からエグジットまでに総発行株式数の何%(多くが10%)を上限にオプションを発行する」という決め方だ。この決め方だと、問題が2つある。1つはエグジットがいつになるか分からないので、増えていく従業員にどう分配するべきかを決めにくいという点。もう1つはストックオプションが足りなくなった際など、発行総量を増やしたいときは、株主全員の株式が希釈化する(1株あたりの権利が小さくなる)のでその交渉が難しい、という点だ。

欧米型のストックオプションは、優先株調達のステージごとに、調達直前の株式数にストックオプション用の株式数が新たに追加された上で、1株あたりの価格が決められる。そしてそれがステージごとに繰り返される。つまり、調達時のプレマネー時価総額に、ストックオプションの発行が織り込まれている(潜在株式によって時価総額は変わらない)ということだ。投資家にとってみると、潜在株式が多いほど投資時の株価が下がるので、そのステージのストックオプションは多いほどよい。起業家は、ステージごとにストックオプションの量が設定されるので、採用計画に合わせてオプションの付与計画も建てやすい、という具合だ。その結果、欧米では総発行株式数の20〜25%のストックオプションが発行されるのが通常だ。

この仕組みの違いの詳細は、若干複雑なので別途まとめたい。

進化論的な考え方からみると、日本のストックオプションも欧米型にいずれ変わっていくと予想できるし、すでにその動きは一部始まっている。これも起業家として、資金調達にあたって仕組みを事前に理解しておきたい重要なツールキットの1つだ。

日本では法制度面で「対等な共同創業者」を設定しにくい

日米のエコシステムの違いとしてもう1つ、共同創業者についての考え方に触れたい。米国の投資家は、アーリーステージのスタートアップに対等かほぼ対等な立場の「共同創業者」がいることを日本以上に重視する傾向にある。スタートアップを運営するのは大変で、1人でこなせるものではない、ものづくり以外にも資金調達、営業、組織マネジメントなど多岐にわたる仕事を、創業者も「チーム」として運営した方が成功確率が上がるはず、という考え方だ。