顧客画面のイメージ。従来はメールやLINEでバラバラになっていた情報がマイページ上に集約される
Faciloの顧客画面のイメージ。従来はメールやLINEでバラバラになっていた情報がマイページ上に集約される

市川氏はリクルートで「SUUMO」事業に携わった後、米国で不動産ポータルなどを手がける不動産テック企業・Movotoに参画。同社ではCFOを務め、M&Aによるイグジットにも貢献した経験を持つ。

リクルート時代を含めると不動産テック領域でのキャリアは15年以上。新たな挑戦として日本の不動産領域の課題を解決するべく、SmartNewsアメリカ版のエンジニアチームの立ち上げメンバーだった梅林泰孝氏(Facilo取締役CTO)とともに会社を設立した。

サービス開発のきっかけとなったのは、仲介会社と顧客におけるやりとりの中で頻出していたフレーズだ。仲介会社の協力を得て約2万件のデータを分析したところ「五月雨式になってしまい申し訳ございません」という言葉が頻繁に使われていたことに気づいたという。

「物件情報のPDFが大量に連投されている、内見のスケジュール調整は伝言ゲームのようにやりとりが続いている、書類の手配においては必要な書類が箇条書きで大量に送られてくる。そのようなことが実際に起こっていました。1つひとつの情報は重要なのですが、メールやLINEの形式とスレッドで情報が行ったり来たりしてしまったり、流れていってしまったりする。後から情報を見返したいと思っても、なかなかたどり着けないことも多いです」(市川氏)

五月雨式のやりとりのイメージ
五月雨式のやりとりのイメージ

Faciloは仲介会社と顧客の間のコミュニケーションを円滑にするための機能と、仲介会社の業務効率化を支援する機能を合わせ持ったプロダクトだ。

物件検索サイトで営業担当や顧客ごとの条件を登録しておけば、次回以降は自動入力する仕組みを搭載。新規物件や価格改定の情報が一目でわかるような機能などと合わせて、物件検索の効率化を後押しする。PowerPointなどを用いて手動で作業する場合には時間のかかっていた「帯替え(物件情報の帯に記載される情報を自社の情報へ変更する作業)」もサービス内で自動化した。

従来はメールで“五月雨式”になっていた物件提案は、顧客専用のクラウドに情報をアップロードすれば一箇所にまとまる。顧客は自分専用のリンクを開けばマイページ上で手軽に物件情報にアクセスでき、内見の日程もシステム上で調整可能だ。顧客が「いつ」「どんな」物件に興味を示したのかは可視化されるため、担当者は顧客に合わせた提案がしやすい。
 

帯替え作業の自動化など仲介会社の担当者の業務を効率化する機能も提供している
帯替え作業の自動化など仲介会社の担当者の業務を効率化する機能も提供している

Faciloでは2022年の春から野村不動産ソリューションズや三菱地所ハウスネットなど一部の企業に先行して試験版を提供してきた。