あらかじめ専用のアプリから時間と場所を指定した上でメニューを注文しておくと、スムーズにいれたてのコーヒーを受け取れる。料金は一律450円。頻繁に利用するユーザー向けに月額1980円からのサブスクリプションプランも提供している。

「人件費をなくすことによりコスト構造を変え、カフェチェーンと比べて原価が4〜6倍高いコーヒー豆を使っても、コモディティコーヒーより少し高いくらいの価格に収めることができている」(中尾氏)ことも特徴で、定期的に利用しているユーザーからは味に対する評価が高いという。

アプリのダウンロード数は2023年3月末時点で8.5万件を超えた。女性が5割強を占め、30代を中心に幅広いユーザーに活用されている。当初はサブスクユーザーが多かったが、サービス自体の認知度や設置場所が広がる中で、単品購入者も増えてきた。

受け取る際のイメージ
受け取る際のイメージ。専用のアプリでは、ユーザーに合ったコーヒーをレコメンドするパーソナライズ診断機能も提供

root Cの実現に欠かせないのが、クラウドと設置したロボット(エッジデバイス)を相互に連携させる「ステート管理(状態管理)」技術だ。双方向で常に状況を共有し合うことで、通信障害などが発生した場合に「ロボットがどこまで自力で復帰するか」といったことを細かく制御できるという。

またロボットの内部に設置されるセンサーなどを用いて、遠隔から温度などの衛生状態を管理できる仕組みを構築した。root Cでは2021年に「規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)」の認定を受けて、「無人店舗での牛乳を使用したカフェラテの販売」を実現している。これも上述した技術を前提としたものだ(現在は移設にともない、カフェラテの提供は一時停止中)。

2021年4月に正式版をローンチしてからの約2年間は、プロダクト開発の傍ら、駅や商業施設、オフィスビルなど場所を変えながら検証を進めてきた。

現在の設置エリアは都内を中心に10箇所。受取の手軽さや、待ち時間なしで好きな時間帯に使えることなどからオフィスビルは特に相性が良い。「カフェや自動販売機ではなくroot Cが良い」との理由から、1階の中央エリアにroot Cを設置する不動産ディベロッパーも存在する。

通路やエレベーターホールの周辺など「人流はあるものの広さが限られており、カフェなどを開設することが難しいスペース」に設置できる点もroot Cの特徴の1つだ。

中尾氏によると、約2年間で「売れる場所、売れない場所の傾向」も徐々に見えてきた。人気の場所では1日200杯以上売れることもある一方で、数杯〜十数杯しか売れない場所もある。「(幅広い層からの需要が見込める)コーヒーだからといって、場所を問わず売れるわけではない」(中尾氏)ことがわかった。