新体制になったエキサイトでは急ピッチで変革が進められ、4期連続で赤字が続いていた会社は約4カ月で黒字化を達成。復活を遂げたエキサイトは事業を拡大し、再び上場企業の仲間入りを果たした。

2022年3月期の売上高は約71億円、営業利益は約3.9億円。TOBを実施した2019年3月期と比べると売上は14.5億円増、営業利益は6.5億円増を実現している。

いかにしてエキサイトは赤字体質から脱却し、再生を果たしたのか。その裏側を西條氏と、変革のキーマンとなった取締役CFOの石井雅也氏に聞いた。

売上と営業利益の推移
近年のエキサイトの売上高と営業利益の推移

TOBの背景にあった勝算と不安

「エキサイトの存在はもちろん知っていましたが、細かい状況までは把握していませんでした。なので、売上が50億円以上あることを知って『こんなに売上があるんだ』と驚きました。事業のポートフォリオを見ても思っていたものとは違い、興味を持ったというのが最初の印象です」

西條氏はTOBを実施する前のエキサイトの印象をそのように振り返る。

IT業界では当時からその名が知られる西條氏だったが、新会社のXTechは創業から1年経たない、いわばスタートアップ。そんなスタートアップが上場する老舗IT企業を買収する──。このTOBは、業界の内外で大きな話題を集めた。西條氏はなぜこのような取り組みを実施したのか。

西條氏は伊藤忠商事を経て、2000年にサイバーエージェントに入社した。在籍中にはサイバーエージェントFXやジークレストなど多くの新規事業を立ち上げ、複数のグループ会社の代表取締役を歴任。本社の専務取締役COOも経験している。

サイバーエージェント退職後はスタートアップの取締役やベンチャーキャピタル・WiLの共同創業者/ジェネラルパートナーなどを務めた後、2018年にXTechとXTech Venturesを設立している。

「自分にとっては40歳を超えての起業になります。サイバーエージェントを始め、さまざまな場所で事業経験を積み、ケーススタディの数だけで言えば、ビジネススクールで学ぶよりも多くのことを経験してきました」

「TikTokを運営するバイトダンスの利益(EBITDA)が3兆円を突破したように、近年はインターネットを活用して今までにない速度でユーザーを獲得できたり、テクノロジーの力でレバレッジが効くような環境が整ってきています。資本市場に関しても十数年前と比べて事業をより加速できるような方向へと発達してきていて、若い経営者でも二桁億円の資金を調達できるような時代です」