もう1つは、組織運営だ。日本は世界的にも若者が住みたい場所として常に上位に入る、とても魅力的な国だ。安全で便利で食が豊かで住みやすい。海外からやってきたエンジニアや、日本に住みたいと思うエンジニアは、思ったより多い。そういう人をどんどんチームに入れていくのは競争力の源泉になりえる。

シリコンバレーにとりあえず来てみる、というのもアリ

日本の起業家は、次々とシリコンバレーにやってくるべきなのか。ただでさえ、さまざまな障害を乗り越えないといけない起業の過程で、さらに外国に引っ越して不慣れな生活を始める価値はあるのか。答えはほとんどの場合「Yes」だと言いたい。

シリコンバレーには世界各地から起業家が集まっていることはすでに述べた。日本人の起業家も、嬉しいことに少しずつだが増えてきている。そして、他国の移民起業家グループと同じように、日本人起業家の間でも助け合いのコミュニティが醸成されてきている。先人たちのおかげで、独りぼっちで途方に暮れることはないだろう。起業家同士、起業家と投資家がネットワーキングするイベントも、毎晩どこかで行われている。

英語力について不安に思うかもしれない。しかし、自分より語彙(ごい)の少ない他国からの移民が、より自信をもってプレゼンしているのを目にすることだろう。そして、英語の語彙力よりも、言語を超えたコミュニケーション能力や積極性の方が、信頼を得るために価値が高いことを実感するはずだ。

どうせ世界を狙うビジネスを立ち上げるなら、米国で法人を設立し(物理的にカリフォルニアにいても、ビジネスに有利な会社法を持つデラウェア州の法律に基づいた法人を作るのが一般的だ)、シリコンバレーのエンジェルから資金調達した方が、その後の調達の選択肢も広がる。競争が増えるのはもちろんだが、世界中の投資家の投資対象になる。例えばデラウェア法人に対して投資できる日本のアーリーステージ投資家は多いが、日本法人に投資できる海外の投資家は数が限られる。言語はもちろん、日本の法律は世界中の投資家にとってまだ未知の領域だからだ。

シリコンバレーでこれまでに出会った日本人の起業家の多くは、海外生活が初めてだ。家族のしがらみなどが少ない若い起業家、または起業を志す人が世界市場を目指す場合は、思い切ってシリコンバレーから始めることを考えていただきたい。

日本からグローバル展開を行っているスタートアップの例

もちろん日本で起業しても、早いうちに海外展開の基礎を築くことは可能だ。特に日本発だからこそ、海外でも優位性を発揮できる領域はさまざまある。デライト・ベンチャーズが支援している投資先の例を2つ挙げたい。