ゼルダBotWではこれに加えて、世の中の物理現象をいくつもシミュレートするという試みを取り入れた。たとえば焚き火の近くにリンクが立つと服に火が燃え移り、ダメージを受ける。しかし焚き火の近くにキノコやりんごなどを置くと、加熱調理されて食物の栄養価が上がる。そんな場所に雨が降ると焚き火は消え、崖を登る際に手が滑りやすくなる反面、雨の音の影響でリンクの足音が聞こえづらくなり、走っても魔物から発見されにくくなる。

時には雷雨になることもあるが、その際に金属製の武器や盾などを装備していると落雷し、ダメージを受けてしまう。だがこれを利用し、夜間に寝込んでいる強敵のそばにそっと金属製の盾などを置いておくと、落雷で魔物に大ダメージを与えるといった攻略方法もある。つまり「もしかしてコレ、できる?」を試したくなり、試して、成功して「よし!」とガッツポーズを取りたくなるわけだ。

もちろん魔物たちを倒し、宿敵を倒してエンディングを迎えるゲーム進行を楽しむ人のほうが多数派だ。ゼルダBotWは「自分で遊び方を探す」ような、ゲーム慣れした人々から大絶賛されていた一方で、指示された順番でシナリオを追体験していく、いわゆる「一本道」なゲームを好むユーザーからは、それほど高い評価は得られてはいなかったようだ。ゼルダBotWは超名作ではあるが、『スーパーマリオブラザーズ』シリーズのような、万人向けのゲームではなかったことも事実ではある。

失敗し、試行錯誤することすら楽しい

ここまで説明してきた内容は、すべて前作のゼルダBotWについての内容だ。最新作のゼルダTotKでは、これらの要素はすべてそのまま引き継がれている上に、「今作ならでは」の要素が加わっている。

新要素の中でも特筆するのが、「ウルトラハンド」というリンクの新たな能力だ。往年のゲームファンなら、この名前は任天堂が1966年に発売した、いわゆる「マジックハンド」の製品名だということに気付くかもしれない。

ゼルダTotKのゲーム内におけるウルトラハンドは、ゲーム内のオブジェクト(木材や板、各種パーツなど)をつかんで動かし、ほかのオブジェクトに近づけることで「接着」させる能力のことだ。たとえばリンクの目前に大きな湖が広がっていたとしよう。そしてリンクの足元には、いくつかの木材や扇風機パーツ(ゲーム内では「ゾナウギア」と呼ぶ)が落ちている。これらを組み合わせて自走式のイカダを作るというのが、ゲームを進行させるための解法であることにひらめくはずだ。