「フードデリバリーの手数料が高額になる主な原因は、配達員の人件費です。現在は、ピークタイムには時給換算で2500円程度稼げる値段でなければ人材が確保できないほど。らくとく便は通常より配達に時間がかかるのがネックですが、上手く巡回できれば配達にかかるコストを3分の1にまで抑えることができます。他社の定額サービスも認識していますがChompyでは飲食店、配達員、ユーザーの三者それぞれにとって適正な手数料でサステナブルなビジネスモデルを目指したいです」(大見氏)

大見氏が言うように、8月5日にはUber Eatsが配達料が月額980円になるサブスクリプションサービスを発表したばかり。同じくフードデリバリーサービスのmenuでも「menu pass」の名称で月額980円の配達サブスクリプションサービスを展開している。

これらはユーザーが支払う配達料の値下げには成功しているが、配達員の作業量は減少しない。むしろ、サブスクリプションの導入によって少額の注文が増えれば、配達員の負担増加につながる可能性があり、将来的には単価の低下などで彼らの報酬が減る可能性もないとは言い切れない。これらに比べてらくとく便は、飲食店・配達員・ユーザーそれぞれが無理なく利益を享受できるというわけだ。

厳選された飲食店の料理を、店主の顔が見える形で伝える

Chompyのもう1つの特徴は、厳選された加盟飲食店のラインナップにあると大見氏は語る。シンは商品ラインナップや既存の評判といった多角的な評価軸に基づいて、店舗を掲載するかどうか判断している。

「掲載希望の飲食店から多数ご連絡をいただいていますが、そのうちの約7割はお断りしています。私たちが目指しているのは『美味しくない店は存在しない』状態です」(大見氏)

また、店舗ページでは店長の顔写真とともにおすすめ商品やコメントを掲載し、飲食店の個性が見えるUI設計を心がけているという。その背景には、「現状のフードデリバリーでは多様な美味しさを提供できていない」という問題意識があるからだ。

一般的に、フードデリバリーサービスの注文画面は、全国展開のチェーン店から個人店まで一律で表示されることが多い。そのため各店の特徴を見分けづらい。その結果、味を想起しやすいチェーン店の料理を注文してしまうことも少なくないだろう。

「お店の空気感や雰囲気といった実店舗で得られた情報はアプリ上では手に入らないため、飲食店ごとの特色を把握するのは困難です。顔写真やコメントを入れているのは、そうした情報を少しでも感じ取ってもらうため。まだまだ至らない点は多いですが、各店舗の魅力を最大限に引き出せるサービスを目指しています」(大見氏)