TalentioとLooperとでは、「人と企業の関係性を変えるという根本の思想は変わらない」という佐野氏だが、「Talentioは採用管理システムとして、求められているものがまだまだたくさんある。採用管理システムがきちんと運用できなければ、タレントのデータ化が進まないので、それはそれで頑張りたいと思っています。そこでLooperを社内で一緒にやっていると、頑張る方向性が違うので、コンテキストスイッチが難しくなるんです」と別会社に分けて事業を進めることにした経緯を説明している。
ところで、佐野氏が言う新しい人と企業の関係性を支援する領域では、リファレンスチェックや採用候補者マネジメント、アルムナイマネジメントなど、個別には他社からもさまざまなサービスが出てきている。佐野氏はこうしたツールについて、「いいシステムがいろいろとあって、Talentioでも連携しているものもあります。ただ、何でもかんでも連携するということではなく、僕自身はあくまでも、この全体像に向かってどういう仮説検証ができるかを突き詰めなければ意味がないと感じています」と話している。
「僕はいろんな事業に興味がありますが、特にHRマネジメントをどう事業戦略にアジャストしていくかという領域では、この全体像の検証をせずに事業をやろうとしてもモチベーションが続かない。LooperとTalentioは分かれてはいますが、抽象化したレベルでは同じところを目指しているので、そういう意味では違和感なく2社の事業を進められるかなと思っています」(佐野氏)
佐野氏は「働く側も変わらなければいけない」とも述べている。人事担当者の中には、新しい人と企業の関係性について話をすると「自社のためにがんばれる人でないと不安なので、やはり新卒採用がよい」という人もまだ多いそうだが、佐野氏は「それは逆なのではないか」という。
「出入りが自由だからこそ、その会社に貢献するというプロのマインドを持った人でなければ、出たら戻って来られなくなる。不義理をしたらそこで終わりなんですよ。採用担当者は、結構採用する人のレピュテーション(評判)も気にしているものです」(佐野氏)
Looper自体、新しい人と企業の関係を体現するような体制で運営されているという。「Looperは今、SmartHRの方にも手伝ってもらい、エンジニアが中心の開発部隊が事業化を進めていますが、僕も含めて全員、時間的にはパートタイムです。だから副業かどうかとか、関係ないんですよね。会社にいかに貢献できるかというマインドセットを持った人が、自分の役割にコミットしてやることが重要だと、Looperをやり出して再認識しています」(佐野氏)