こうした状況をLooperではどう打開しようとしているのか。その1つが、タレントプールに自動で、企業の現時点での求人情報を送ることだ。

「オファーはしたものの採用に至らず、半年接触がない人をピックアップして、アップデートされた求人情報を送ることで、新たなポジションで適切な採用ができる可能性が出てきます」(佐野氏)

現在、Looperでは機械学習などによるタレントデータと求人とのマッチングについて、いくつかのアルゴリズムでコンセプト検証を進めているところだ。

「SmartHRは人事システムの外にあって、入社時の手続きや労務手続きを対象に業務効率化を行ってきました。その労務管理のデータと突き合わせて考えたときに、例えば『ポジションが頻繁に変動していて、給与も上がっている人は優秀な確率が高い』といった仮説が考えられます。すると評価データを読み込まなくても、労務管理のデータからアルゴリズムを学習して、本社で活躍しそうな人材としてピックアップすることができる。こうしてLooperの中に人材情報の蓄積ができ、循環していくことで、人と企業の関係性の終わりと始まりをあいまいにする、HRマネジメントの仕組みがつくれると考えています」(佐野氏)

Looperのアルゴリズムの考え方について、佐野氏は「『Spotify』のようなもの」と説明する。

 

「まずはタレント情報をアーカイブしましょう、とLooperでは言っていますが、アーカイブ化すると次に何が起こるかというと『発見できない』ということです。Spotifyが優れているのは、『あなたにはこの音楽がいいんじゃないでしょうか』というものをアーカイブに埋もれた中からプレイリストにしてくれる点です。Looperはタレントの“プレイリスト”なんです」(佐野氏)

Looperの中には、自動ではなく手動で“プレイリスト”を作成する機能も用意するという。「目利きの人が『この人たちと働きたい』というプレイリストを作ったら、そのプレイリストはフォローしたいですよね。『この人たちに接触して欲しい』という情報が目利きの頭の中だけにある、あるいはそれを忘れてしまうから、マネジメントがキツいんです。それがちゃんと管理されていれば、始まりと終わりがない、人と企業の関係性のマネジメントというのが実現できるのではないかと思っています」(佐野氏)

ポストコロナでも新しい人と企業のあり方は有効

SmartHRの宮田氏は、以前から同じHR領域のサービス事業者として佐野氏と交流があり、プロダクトのAPI連携やイベントの共催などでも協力してきた間柄。佐野氏からLooperのコンセプトを聞き、宮田氏は「すごく面白がってくれた」(佐野氏)そうだ。SmartHRもデータをいかに活用するかという点で、大きな方向感が同じだったと佐野氏。そこでLooperを一緒に手がけることになったという。