「ステップとしては、その部分をまずデータ化しないと意味がないと考えました。外部市場(人材採用や求人広告、人材紹介)のデータベースは既にいっぱいあるので、採用候補者のタレントデータベースの部分をTalentioで用意しました」(佐野氏)
佐野氏はまた、半内部労働市場を対象とするHRマネジメントのモデルを取り入れることで、インターナルフローの部分も変わると考えている。
「『ノーレーティング』(従業員をランク付けしない評価手法)などを使いだした企業もありますが、四半期ごとに評価をするというのは結構負荷がかかります。何より、報酬と評価が連動していることは硬直化の原因にもなります。そこを切り離すような仕組みはいろいろ考えられると思うので、この部分については従来のシステムから改善が必要なところもあるだろうと考えます」(佐野氏)
さらに採用時点のタレントプールをデータ化するだけでなく、アルムナイのマネジメントも加わる。採用管理についてはTalentioでカバーできるようになってきたとして、選考からいったん外れた候補者(タレント)の情報やアルムナイの情報をデータとして蓄積しておく必要がある。そのため、半内部労働市場を対象としたデータベースとしてLooperを考えたと佐野氏はいう。
Looperはタレントの“プレイリスト”、人材の「Spotify」
半内部労働市場をマネジメントするときの考え方として、佐野氏はインターナルフローの中の「配置」が鍵になると考えている。採用が「外部労働市場から人材をいかに企業へ呼び込めるかのための活動」だとすれば、配置は内部労働市場からの採用活動である、と佐野氏は言う。
「採用管理システムでは採用プロセスを合理化して、いかにいい採用体験をつくるかということが目的となります。採用プロセスの合理化では、応募者の情報を一元管理できたり、候補者との書類のやり取りを効率化したりすることが価値になります。しかしデータを活用するのはまた別の話で、半内部労働市場のデータを扱おうというときに、その価値だけでは足りない。そこでLooperでは、内部労働市場からの採用活動である『配置』にタレントがヒットする状態を、データベースを活用していかに早く作るかを考え、有意義な体験を双方につくろうとしています」(佐野氏)
佐野氏は具体的に、以下のようなユースケースを挙げている。
「例えば大企業では、空いているジョブスクリプション(仕事のポジションや目的)はたぶん把握しきれていないところが多く、グループ会社も含めると1000を超えるところもあるでしょう。似たような求人があったとしても、事業部ごとに独立して採用をかけていれば、『1つのポジション×職種』の求人がそれぞれにある状態です。しかも年数万人の新卒採用候補者との接触もしなければならない。となると、中途採用も含めて『この人には、こちらのポジションの方が良かったかもしれない』という機会損失が起こります。より適切な配置が、担当者の認知の外にあるか、あるいは属人化してしまっているわけです」(佐野氏)