登録した請求書の内容は搭載したOCRエンジンが判別し、数秒で会計仕訳を作る。あわせて請求書に記載された振込先の銀行口座情報を抽出することで、振込データまで素早く完成させてくれるのもポイントだ。

オートメーションラボ代表取締役の村山毅氏によると、従来はさまざまなルートから回収された請求書が経理担当者の元に集められ、その内容を1つ1つ目視で確認しながら仕訳作業を実施していた。支払い期日が“翌月末払い”のケースが多いため、受け取った請求書は整理した上で一度棚などに保管しておき、月末に再度引っ張り出してきて内容を照らし合わせながら振り込み作業をすることも珍しくない。

sweeepでは一連の「回収・仕訳・振込・保管」業務の大部分が自動化されるわけだ。

複数の回収ルートに対応。オンライン回収機能を使えば、スムーズに請求書データを受け取れる
複数の回収ルートに対応。オンライン回収機能を使えば、スムーズに請求書データを受け取れる
 
受け取った請求書はsweeepで一元管理。紙で管理する場合と比べて過去の請求書も見つけやすい
受け取った請求書はsweeepで一元管理。紙で管理する場合と比べて過去の請求書も見つけやすい

10年以上のコンサル経験で見えた「請求書」にまつわる課題

sweeepのアイデアは村山氏の過去の経験が大きく影響している。村山氏は会計コンサルティングファームの出身。同社では会計システムの導入やBPR(業務プロセス改善)にまつわるコンサルティング業務に携わった。

2011年にオートメーションラボを立ち上げた後も経理を含めたバックオフィス領域のBPRやBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)業務に取り組む中で、多くの顧客が「請求書の処理」に課題を抱えていることに気づいたという。

「基本的に紙でやりとりされることが多く、(他の業務でデジタル化が進んでも)請求書だけはデータに繋がらず、デジタル化から取り残されてきました。請求書の処理は月末月初の忙しい時期に、人海戦術で大変な思いをしながらこなしている現場がほとんど。決して生産性の高い仕事とは言えず、同じような情報をひたすら打ち込み続ける作業の割合が多いです。15年ほどこの領域のコンサルティングをやる中で、どうすれば現場の担当者が少しでも楽しく仕事ができるかを模索してきた結果、請求書の処理はなるべく機械に任せ、担当者がもっと別の業務に時間を使えるようにしたいと考えました」(村山氏)

2016年にRPAの導入コンサル事業を始めたことも1つのきっかけになった。そこで請求書の処理業務が現場の負担になっていることを改めて痛感するとともに、その業務を自動化するためには“紙で送られてきたアナログなデータ”を正確に読み取るOCRが必要だと考えるようになった。

sweeepの開発に取り組んでいた2017年から2018年は日本でもAIを活用したOCRプロダクトが複数登場し、注目を集め始めていた時期だ。OCR自体は決して珍しくなかったが、それでも請求書に特化したOCRエンジンはまだなかった。