加えて、単にOCRを用意するだけでは根本的な問題解決には繋がらない。請求書の読み取りに特化したOCRを開発した上で、その後工程も含めてサポートできる仕組みが必要だと村山氏は考えた。
「OCRはいわば『目』に当たる部分。もちろん重要な機能であることは間違い無いですが、読み取ったデータを判断して実際に仕訳などの業務を行うのは人間です。OCRだけでは、結局その後の業務に人が介在しないと進まなくなってしまう。関連する業務をトータルでサポートできるプロダクトが必要であり、自分はユーザー側の業務を熟知していたのでこれまでの経験が活かせると思いました」(村山氏)
8割の業務削減を実現、経理のリモートワークニーズにも対応
約1年ほどの期間をかけて準備を進め、2018年12月にsweeepをリリース。現在は大手企業を中心に100社以上に導入されている。
顧客の業界などはバラバラだが、「請求書の処理業務をする上で紙をなくしたい」というニーズは共通だ。
たとえばある現場では3人の担当者が月初の請求書の整理・仕訳作業に20〜30時間、振り込み作業に別途10〜20時間ほどを要していたそう。そこにsweeepを取り入れることで実際に8割ほどの業務削減に繋がった。このような現場は多く、同サービスの顧客の典型的なパターンだ。
同様のシステムも存在はするが、請求書に特化したOCRエンジンを持っていることと、文字を読み取った後の経理業務に対応していることがsweeepの強みになっている。
村山氏によると汎用型のOCRエンジンは非定型のものに弱く精度が落ちてしまったり、ユーザー側に別途作業が発生してしまったりするものも多いそう。sweeepではあくまで請求書に絞って認識技術を磨いてきたことで高い精度を保てるだけでなく、自動仕訳を代表するように読み取ったデータの変換処理の仕組みも整えてきたことがユーザーからの評価に繋がっているという。
シンプルな業務削減ニーズに加え、ここ半年ほどでリモートワーク環境に対応するためにsweeepを使いたいという声も増えた。上述した通り同サービスにはオンライン上で請求書データを回収する機能が以前から実装されていたが、それは請求書の発行元が電子データで請求書を作成することが前提。紙で郵送された請求書については出社して対応する必要があった。
そこでオートメーションラボでは7月にクラウド郵便管理サービスの「atena」と連携。ユーザーが両サービスを使うことで、“紙の請求書のための出社”をなくし、完全にオンラインで請求書を回収できる仕組みを作った。