その後も改修を重ね続け、2019年11月には月間の利用者数は330万人を突破している。ミクステンドは、調整さんカレンダーをヒントにTimeRexを2020年1月にリリース。コロナ禍でのニーズに合わせ、GoogleカレンダーやMicrosoft 365の予定表だけでなく、Zoomとも連携。2020年9月には、Zoom連携を活用したミーティングの件数は5000回、さらにリリースから8カ月でユーザー数も1万人を越えるなど右肩上がりで成長を続けている。

まさに北野氏のキャリアは“調整さん”を中心に進んできている。なぜ北野氏はそこまで調整さんに惚れ込んだのか、また日程調整の可能性はどこにあるのか。話を聞いた。

「調整さんを続けたい」の想いで大学中退、そして起業

北野氏がリクルートでインターンを始めたのは2014年。当時、「みんなが便利だと思うサービスを作りたい」と考えていたことから、北野氏は大学進学とともにWeb制作やコーディングに取り組む。その経験をもとに「今度はチーム開発を学びたい」と思い、たどり着いたのがリクルートでのエンジニアインターンだった。

「インターンを始めて、最初に配属されたのが調整さんを担当する新規事業部門。ちょうどリクルートは調整さんのグロースに着手したばかりで、僕自身もいくつかの施策を担当することになりました」(北野氏)

当時、調整さんの月間利用者数は70万人。グロース施策では「使いやすさ」を徹底的に追求し、最終的なゴールは定めつつ、小さく速く改修をくり返すスタイルだった。多いときは「100パターンほど施策を用意し、A/Bテストで検証することもありました」と北野氏は振り返る。

実際、入力フォームの最適化やイベント作成時のボタンの色や大きさ、イベント説明時のフォントサイズ、出欠マークの初期値の調整などを改善してきた。

「調整さんをグロースさせていくにあたって、大事にしていた指標が『幹事転換率』です。基本的には幹事が日程調整するために使うサービスですが、大事なのは参加者。彼らが『日程調整で便利なサービスだ』と思えば、幹事になったときに使ってもらえます。そうやって、参加者を幹事に転換させることでサービスを広げてきたのです。現在は追っていない数字ですが、当時はとても大事な指標でした」(北野氏)

北野氏は大学を休学し、リクルートのインターンに参加していた。約2年が経ち、再び大学へ戻る期限が迫っていたが、北野氏は「引き続き調整さんの開発を続けたい」と考えて大学を中退。リクルートへの入社も考えたが、入社後に希望する部署へ配属されるかどうかが確実にわからなかったため、フリーランスのエンジニアとして開発ディレクターを担当することになった。インターン時代を含め、約4年かけて調整さんに関わり続けてきた北野氏。だが、ここで調整さんの事業譲渡がリクルート社内で持ち上がる。