「一時は譲渡先企業で開発を続ける案もありました。ただ、個人的にあまり納得できなくて。『であれば、自分が譲渡先になればいいのではないか』と考えてミクステンドを創業し、調整さんを事業譲受しました。しかし、経営の知識があったわけではなく、登記方法もネットで調べるレベルでした(笑)」(北野氏)
ニーズの異なりに気づき、スタートした“ビジネス版調整さん”
事業譲受後は、調整さんと調整さんカレンダーの改善に社内のリソースを集中。引き続き“使いやすさ”を追求し、細かな改善を重ねていった。北野氏いわく「グロース構造はしっかりできている」ため、広告宣伝費はかけないまま、2019年11月には月間利用者数330万人、年間で130%成長させることができた。
一方の調整さんカレンダーは、法人向けの予約受付サービスだ。日程調整だけでなく予約の受け付けができ、おもに個人の飲食店などが利用していた。調整さんと一緒に改善を進めていたが、その過程で「日程調整」「予約管理」ではそれぞれニーズが異なることに気づく。
日程調整は使いやすさにフォーカスすればいいが、予約受付は「誰が予約したのか」を明確にする必要があり、使いやすさだけでなくデザインも重視することになる。サービスとして日程調整と予約受付を一緒にしないほうがいいと判断。結果的に調整さんカレンダーは予約受付に特化することになった。そして日程調整の機能を切り出す形で、“ビジネス版調整さん”としてリリースしたのがTimeRexだった。
「TimeRexのこだわりは、やはり調整さんと同じく『使いやすさ』です。一般的な法人向けサービスは社内だけの利用でとどまります。そのため社内の誰かが使い方をわかっていればいいんです。しかし、日程調整ツールは社外の人たちも前提知識なく使えるようにしておく必要があります」
「前提知識がないと使えない状態では『だったら日程だけメールしてくれよ』となってしまいます。そんな状況は断固として避けたいのでTimeRexは誰でも、何も考えずに使えるサービスを常に目指しています」(北野氏)
TimeRexはGoogleカレンダーやMicrosoft、Zoomとも連携。特にZoomとの連携は、コロナ禍でのニーズを汲み取ったものでもある。
「TimeRexをリリースしたのは2020年1月。当時は新型コロナウイルスの影響はそこまで強くありませんでした。しかし、少しずつリモート化が進み、TimeRexもオンライン会議の日程調整で使われるようになりました」