Ideinは2015年の創業以降、ベンチャーキャピタルや事業会社から複数回に渡って累計で10億円以上の資金を集めながら、コア技術の研究開発や大手企業との共同開発などに取り組んできた。2018年12月にActcastのアルファ版をリリースしてからは、同サービスの開発にも力を入れる。
今後はこのActcastを主力事業として、研究開発やパートナーとの連携をさらに加速させる計画。10月28日には事業会社を中心に複数社から20億円の資金調達を実施した。
調達資金は主にビジネスサイドおよび研究開発サイドの人材採用強化に用いる方針。Ideinとしては今回のラウンドを事業戦略ラウンドとして位置付けていて、株主と事業面の連携も進めるという。
- アイシン精機(既存投資家)
- KDDI
- 双日
- DG Daiwa Ventures(既存投資家)
- DGベンチャーズ
- 伊藤忠テクノソリューションズ
- いわぎん事業創造キャピタル
安価なエッジデバイスでもAIモデルを動かせる独自技術
そもそもIoTの領域でエッジ技術が注目を集めているのは、データ量の増加やプライバシー保護の影響が大きい。特にAIを活用したサービスは画像や音声といったボリュームの大きいデータを扱い、常時動き続けるタイプのものが多くなる。
膨大な生データを処理するために、結果として通信コストやサーバーコストが従来のウェブサービスとは比べ物にならないくらい膨れ上がってしまうわけだ。
エッジコンピューティングでは「末端デバイスで計算を行い、必要最小限なデータのみをサーバー側に送る」ことで、通信コストやサーバーコストを大幅に削減できるのが特徴。クラウド側で処理を実行するクラウドAIでネックになりがちだった通信の遅延や、個人情報・機密情報の漏洩といったプライバシー面のリスクも抑えられる。
一方でエッジ技術を用いたAI/IoTプロダクトを広げていく上では、いくつか超えなければならない壁もある。たとえばカメラ端末などが1台10万円もするようであれば、どうしてもコストがネックになって用途が限られる。何台もの端末を現場で運用する場合、1台1台を遠隔できちんと管理できる仕組みも必要だ。
Ideinの強みはまさにこれらの課題を関連するコア技術にある。同社では以前からRaspberry Pi上でディープラーニングモデルによる高度な計算を実行できる仕組みを研究してきた。
同じ課題に取り組む企業の多くが「モデルを小さくすることで計算量を圧縮し、高速化を測る」アプローチを取っている一方、Ideinでは「エッジデバイス側をハックすることで処理能力の限界を引き上げ、モデルを圧縮せずに高速化を実現する」という難題に挑戦している。