吉川氏は、契約電子化は平時でも決断が難しい経営課題だとして「新型コロナウイルス対策や自粛要請への対応など、目の前の課題だけで精いっぱいというところへ(重い経営判断を伴う)負担をかけることになるので、簡単ではない。我々としてもどこまでサポートできるか、いろいろ検討しているところ」と述べている。
検討している対策の中には「政府に民間の電子契約の実情を伝えていくこと」も含まれると吉川氏はいう。「IT担当大臣が事情を分かっていない、などと騒いでいてもしょうがない。電子化を進めたくてもできないのには理由があるわけで、経営者が『よし、やろう』と思うには政府の後押しも必要。新型コロナウイルスの影響で契約の電子化への勢いは出ているところなので、『やりたいのにできない』というのはもったいない状況だ。なぜできないのかを分析して、推進する必要がある」(吉川氏)
メルカリでは社内のペーパーレス化は進んでいたということで、電子化そのものへのハードルは低く、「一部既存システムとの連携で調整が必要だが、ある程度時間をかければ契約電子化も実現できる」と吉川氏は話していたが、一般には、それ以前の課題が立ちふさがる企業も多いことだろう。
吉川氏は電子契約の社会への浸透について「すぐには実現できなくても、変えなければ進まない。今回の機会を生かして(紙・はんこの実情を)変えていこうというコミットメントを、みんなでできるようになれば」と期待する。「電子契約はこれまで、働き方改革や生産性、効率向上の文脈で捉えられてきたが、今や、従業員の健康や命を守るという、より重い経営課題となっている」(吉川氏)