Rakuten EXPRESSは楽天の配達員が直接配送を行うサービスで、生活用品や日用品を取り扱う「楽天24」などの直販店舗や「楽天ブックス」、ファッションEC「Rakuten Fashion」、家電EC「楽天ビック」などの配送で利用できる。24時まで時間指定ができる再配達なども実施していたが、新たな配送手段として、置き配を追加した形だ。

 EC事業者が配送の選択肢としてOKIPPAを採用したのは、今回が初めて。その意義を、Yper代表取締役の内山智晴氏は次のように説明する。

「これまでOKIPPAを利用するためには、受取人が住所欄にOKIPPAでの受け取りを希望する旨を書いておく、つまりは受取人が配達員に配達ボックスに荷物を入れてもらうように頼む必要がありました。しかし、今回の提携により、直接の依頼主であるEC事業者が配達員に置き配を依頼することになります。そのため配達員が指示を見落とす、内容を把握できないといった伝達ミスが大幅に減少するはずです」(内山氏)

 また、これまでも置き配の効果を図るため実証実験を行ってきたYperだが、今後は楽天の利用者を対象に、より正確な利用データを取っていく。「(これまでの実証実験で)OKIPPAの導入によってECの利用頻度が高まることは分かっていますが、楽天さんと提携することで年間利用額がどの程度増えるのかなどの具体的な数値がわかれば、さらにOKIPPAの普及に役立てることができます」(内山氏)

Rakuten EXPRESSとの提携を記念してつくられた楽天仕様のOKIPPAバッグ。容量は、使用頻度の高い日用品の受け取りに使ってもすぐには満杯にならない57L 提供:YperRakuten EXPRESSとの提携を記念してつくられた楽天仕様のOKIPPAバッグ。容量は、使用頻度の高い日用品の受け取りに使ってもすぐには満杯にならない57L 提供:Yper

伊藤忠出身の起業家が狙うのは
「再配達」の撲滅

 Yperは、伊藤忠商事に務めていた内山氏が2017年に創業。2019年4月にはシリーズAラウンドとしてニッセイ・キャピタルとみずほキャピタルを引受先とした3.5億円の資金調達を実施している。これまでに販売したバッグは約15万個。現在の主な収益源はバッグの販売益だが、今後はEC事業者の配送オプションとして提供することで、収益化など、インフラとして側面を強くしたいという。

 内山氏がYperを立ち上げたのは、日本の物流業界の問題点である再配達問題を解決するためだ。宅配便の取り扱い個数は2018年までの5年間で約6.7億個も増加しており(経済産業省調べ)、宅配の再配達率は約15%にものぼる(国土交通省調べ)。

「指定した時間に荷物が届き、再配達にも対応してくれる日本の物流は、間違いなく世界でも最高水準です。しかし、そんな日本の物流に時間・資金の面で大きな打撃を与えているのが、再配達です。大手でもなかなか解決できていない問題ですが、フットワークの軽いスタートアップだからこそできることがあると考え、OKIPPAを始めました」(内山氏)