Onlabに入った当初企画していたのは、SaaS製品の口コミサイトでした。ですが、それがサービスとしていかに甘かったかというのも分かっていきました。例えばメンターから「ユーザーは本当にこういう風なところで困っているんですか」「まずヒアリングしてみましょう」といった指導を受けるんです。それで実際にヒアリングに行ってみると、やっぱり思っていた状況とは全然違ったんですよね。口コミを書いてくれる人たちはいたんですが、「製品選びの課題はなんですか」「そのときにこのサイト見ようと思いますか」と尋ねたら、実はみんな中途半端な回答だったんです。
製品選びって、困っているどころかむしろ結構楽しいから調べていたり、一応口コミは見たりするけれども、これをもとに意思決定をすることはない。参考程度にしかならないといった答えが返ってきました。このまま口コミサイトをやっているのではダメだ。「本当の課題」を探さないといけないと気付きました。Onlabに入って最初の1週間くらいの出来事です。
「10回のピボットまでは頑張ろう」
そこからはめちゃくちゃにピボットをしました。まず「(こんな課題があるのではないかという)課題の仮説」を立てて、それを解決できそうなサービスのプロトタイプを作ります。それについて5〜10人にくらいにヒアリングして、課題としてアリかナシかという判断を1週間でやる――こんなことを2カ月間くらいずっと繰り返していました。
ですが、なかなか僕たちにぴったりとハマる課題というのは見つからなかったんですよね。課題を見つけるのが本当に難しい。なんというか、便利な世の中なんですよね(笑)。
そんな中で、たまたま奥さんの産休・育休手続きを「おっ、世の中の課題があった」みたいな感じで見ていたんですよね。それで社会保険を調べてみたら、「これこそみんなが困っていることだ」っていう感じだったんですよ。それがSmartHRを作るきっかけです。
今までのヒアリングでのお客さんのリアクションって、「そうですね……まぁ強いて言えば困っている……うーん困ってます」と、無理やり言ってくれるようなところがありました。ですが、「社会保険手続きって月何回くらいありますか?」とか「役所でどんくらい待ちます?」とかいった質問をしただけでも「ちょっと聞いてくださいよ!!」といった感じで、聞いてもいないことまで話してくれるんです。みなさん熱量が高くて。これが「世の中の課題を見つけた」ということなんだと思ったのを、すごく覚えています。