ですが、SmartHRはその逆でした。「これこそ自分たちがやるべきだ」って思っていたんですよね。自分の病気の経験が生きたり、奥さんの課題があったりしたので。それに加えて、僕らはもともと口コミサイトを作るくらいにSaaSに興味を持っていましたから。「これは自分たちがやるべきサービスだ」と思ってやりきれたというのがあります。
3つめは、(YCom創業者の)ポール・グレアムのエッセイ、「死なないために(原題:How Not to Die)」です。ざっくりと内容を説明すると「スタートアップの半分はうまくいかなくて、半分はうまくいく。じゃあその違いは何かと言うと、諦めないかどうかだけの一点だ」という話です。
スタートアップが死ぬ理由に、お金が払えなくなってインターネット回線を止められたって言われることなんてほぼないんです。だいたいみんな何かしら諦める理由を見つけてやめてしまう。ただ、キーを叩いてる限りはスタートアップは死なないから諦めないように頑張りましょう、と。大変なことが起きたときに、ポールが何と言ってたか思い出せ、そうだ、「諦めるな」だ。そんなことを書いていました。
なんだかんだ言っても、毎週のように事業をピボットするって、前に進まないし、めちゃくちゃ大変で、心が折れるんですよね。「これはイケるぞ」と思ってヒアリングに行ったら全然ダメで、またやり直しというのが続くんです。その時に、心を保てたのはこれを読んでいたからなんですよね。毎日へこんだまま帰りの電車に乗るんですけれども、スマートフォンのホーム画面からすぐにこのエッセイを読めるようにしておいて、読みながら家に帰っていたんですよ。本当に毎日のように読んでいて、自分で自分を奮い立たせて続けていました。
そしてやはり、共同創業者がいたのが良かった。この会社は、共同創業者の内藤君を彼の前職から引き抜いて始めた会社です。ですがSmartHRを出すまで、起業から2年の間、僕たちは何も残せていませんでした。「このまま内藤君を手ぶらで帰すわけにはいかない」と思っていたのが、最後まで諦めずにやれた要因かなと思っています。
外に出て「声」を聞け、あきらめるな
次の挑戦者の人たちに伝えたいことですが、1つは「外に出る」ということ。結局のところ、人間って机上の空論からものづくりしてしまいがちだと思うんですよ。世の中の大半、失敗している事業なんかはそれが原因だと思ってます。やっぱり外に出てユーザーの声を聞いたり、世の中の課題っていうのを実際に自分たちで見つけたりするところが第一歩かなと思ってます。それをすることで、本当に人が欲しいと思うものを作れるようになると思っています。