2つ目の理由は、「自分たちができること」から発想した結果、誰も欲しがらないサービスを作っていたことだと思います。SmartHRは、世の中の課題やユーザーの課題を解決しようという発想で、課題から作ったサービスです。ですが初期の自社サービスは、机上の空論でものづくりをしていました。自分たちができることから発想しても、誰もそのサービスを欲しがりません。
そんな理由から、起業から2年間くらいは鳴かず飛ばずの状態でした。いつも銀行口座の残高はギリギリでした。会社の口座残高が10万円を切ったことも2回ありました。「会社の残高は10万円、自分の残高10万円、しかも来月には子どもが生まれる」という状況に陥り、これはいよいよヤバい、どうしようかと考えました。当時のメンバーは、共同創業者と2人きり。このままだと自分たちは何者にもなれないし、会社も死んでいく……。そんな風に思いながら漠然と働いていました。
アクセラレータープログラム「Onlab」との出合い
そんなとき、ずっと気になっていたインキュベーションプログラムがOnlabでした。これは本当によこしまな考えなんですが、Onlabに入ったスタートアップがことごとくうまくいっているように見えてたんですよね。特にすごく印象が残っていたのがFablic(フリマアプリ「フリル」を運営していたスタートアップ。後に楽天が買収)とWondershake(女性メディア「LOCARI」運営のスタートアップ)の2社でした。
Wondershakeの鈴木君(代表取締役の鈴木仁士氏)は東日本大震災の日に出会ったのでよく覚えています。当時大学生だった彼は、その数カ月後に起業して、いきなりVCから数千万円の資金を集めていました。Fablicは創業メンバーの1人であるtakejun(Fablic取締役兼デザイナーで共同創業者の竹渓潤氏。takejunはTwitterなどでのアカウント名)が以前から飲み友達だったんです。彼からフリルについての相談を受けているうちに、あれよあれよという間に大きくなっていくのを見ていました。それで僕たちも2014年の夏にOnlabに申し込んだんですが、審査に落ちて入れませんでした。その半年後にまたチャレンジして、何とか審査に受かったんです。
ちなみにOnlabに入ったからうまくいくというのは幻想でした(笑)。結局自分たちで頑張らなきゃいけないんですよね。ただ、Onlabは頑張るためにいろいろなチャンスをくれました。一番良かったのは自分たちのサービスをお披露目する「デモデイ」です。Onlabに入ると、デモデイのある3カ月後までにサービスを磨いて、事業の数字を作って、デモデイで投資家にその成果を発表するんです。3カ月という期間と、デモデイがセットになっているんで、「結果にコミット」ではないですが、むちゃくちゃ頑張るんです。