同社広報によると、4月の利用回数は減少したものの、4月1日~20日の期間で1日あたりの新規加入者数は3月に比べて2割増加。今まで使ってこなかった人たちが、デリバリーの需要拡大に応えたり、コロナを期に通勤で電車の代わりに使ったりしたことが想定されるという。
この流れは他社でも同様だ。ソフトバンクグループの新規事業提案制度から生まれたシェアサイクル事業を通じて設立された「HELLO CYCLING」を展開するOpenStreet。同社の執行役員を務める工藤智彰氏も、外出自粛要請の前後を比較すると、シェアサイクルの利用回数は減少したが、利用時間・距離が伸びたことから、デリバリーや通勤目的での利用が増加したのではないかと分析する。
シェアサイクルは飲食店の救世主になり得るか
ドコモ・バイクシェア、HELLO CYCLING、Charichariなど既存のプレイヤーたちを追う後発のLUUPは、デリバリーや通勤を目的とした利用を想定しつつも、飲食店向けサポートを充実させることで差別化を図ろうとしている。
具体的には、アプリから飲食店のメニューを確認し連絡ができるようにすることで、利用者が徒歩圏内より遠くの店まで足を運ぶよう促している。LUUPでは利用する際に降りるポートを指定する必要があるが、ポートの半数以上は飲食店の空きスペースに配置されている。岡井氏いわく、「飲食店を救いたい」という思いから、コロナ禍の今、意図的に飲食店へのポート導入を増やしたという。
「フードデリバリーにはどの飲食店でもすぐに参入できるわけではない。そのため、テイクアウトでも顧客が取りに来られる仕組みが求められていると考えた」(岡井氏)
LUUPでは「展開エリア内の既存のシェアサイクル事業者と比較して最も高密度にポートが設置されている」ことをウリにしているが、これは「利用したいが自転車がない」といった事態を避けるためだ。自転車とポートのサイズを小さくすることで、より多様な場所に展開することを可能にした。そして自転車・ポートの小ささの背景には、将来的には機体を電動キックボードに置き換える計画がある。
電動キックボードのシェアリングを目指して
2018年7月に設立されたLuupは、短距離移動に特化した交通インフラの構築を目指すスタートアップだ。岡井氏はマイクロモビリティの社会実装を促進する「マイクロモビリティ推進協議会」の会長でもある。電動キックボードの事業者が中心となり設立された同協議会には、米大手Limeの日本法人も参加している。