30億円調達はジョイントベンチャー設立も視野に

――30億円という大型調達を行いました。資金の使途や今後の展開について教えてください。

 業態的にも赤字を掘るビジネスではないため、いわゆるシード、シリーズAといった段階的なファイナンスを行うことは考えていません。これが初の資金調達ですが、ラストファイナンスになるくらいで考えています。

 まず、官報にも数字が出ています(2019年3月期の決算は純利益71万9000円、総資産1億2194万2000円)が、すでにある程度のプロダクトマーケットフィットは見えていて、会社としては「回っている状態」になっています。社員の人数が増えるとともに成長するのは見えている状態です。そして30億円で数百人、千人と採用をするのか思われるかもしれませんが、そうではありません。

 僕らは「DXというのは、ものを作っているときにできてくるもの」だと考えています。コンサルを受けるだけで、「デジタル化とはこうだ」と言えるものではないと思っています。

 例えば三井物産とのジョイントベンチャーでも、普通のベンチャーのシリーズAくらいの調達額くらいの資金を突っ込んでいるんです(編集注:ジョイントベンチャーである三井物産デジタル・アセットマネジメントの資本金は5億円、LayerXの出資比率は36%のため、1.8億円の出資を行っている)。そこで僕らはアセットマネジメント会社としての利益も取りつつ、DXをやっていきます。調達した資金も、ジョイントベンチャーを作るような、「実行の場」に使っていくつもりです。

 幸い僕たちを信頼してサポートをしてくれるVCもいるので、単なる受託ではなく、アセットマネジメントのような事業をやりつつ、汎用的なDXのパッケージも作っているという立ち位置を狙います。

――Gunosyは創業から3年で上場を果たしました。LayerXの目標について教えてください。

 ビジョンで言えば、ここまで話してきたような世界観を作っていきたいと思っています。

 ですがそのためには、裏付けとなる業績やキャッシュフローエンジンがないと、ただの空想になってしまいます。ですから、短期的には今やっているビジネスを伸ばしていく。先ほど話したように、基本的には案件が増えて、人が増えれば事業を伸ばしていける状況は作れているので、それをきっちりやリ抜く。デジタル化に貢献してしっかりお金をもらっていくということです。

 長期的な目線での目標を言うと……この20年ほどで伸びている企業って、BtoBのバーティカルキラー(領域特化型の事業)だと思っています。MonotaROやエムスリー、GMOペイメントゲートウェイといった会社がヤフーの時価総額を超える勢いです。そのほかにはfreeeやマネーフォワードなどもバーティカルキラーです。そういった存在にならないといけない。10年、20年経っても必要とされるのは社会のインフラになる会社です。そこを取りにいくためには、単なる開発会社ではなく、(デジタル化されていない産業の事業者と)ジョイントベンチャー、合弁会社を作ってレベニューシェアのモデルで事業をしていきます。