今はブロックチェーン自体を物珍しく感じて導入してくれる企業がありますが、今後は「便利だから使う」に変わっていくと思っています。ただし、動かそうとしている山は巨大です。会社として掲げるミッションの実現という意味では、まだ山は1ミリも動いていないと思っています。

 また同時に、LayerXはブロックチェーンファーストではなく、課題ファーストの会社です。「契約をフックにして送金をする」という処理が必要なのであれば、その際にプロとしてソリューションを選定します。システムの入り口は契約や会計に特化したSaaSを使う、裏側で改ざん不能なトランザクションの処理が必要ならブロックチェーンを使うという具合です。大企業の皆さんほど既存のシステムを触っているので、「システムすべてをブロックチェーンに移行するイメージが湧かない」と言われるのですが、ブロックチェーンはあくまで裏のデータを繋ぐ技術です。これは先行する中国のサービスなどでは常識になっています。

 一方で、業務システムに組み込むには汎用的なSaaSは使えないことが多いです。なので、電子契約SaaSを提供する弁護士ドットコムや会計SaaSのマネーフォワードなどとパートナーシップを組んでおり、(クライアントの)ワークフローにあわせて利用できるようシステムを設計しています。

三井物産とアセマネ会社を作るワケ

――三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)との実証実験など、大企業との連携についても発表しています。

 今公開しているのは、MUFGと取り組む次世代金融取引サービスに関する実証実験。そして三井物産、SMBC日興証券、三井住友信託銀行と合同でアセットマネジメント事業の新会社。そしてニトリとは物流システムの開発の準備を進めています。

 例えばアセットマネジメントでも、不動産の証券化というのにはものすごいフローがあって、それを今、全部紙でやっています。それをデジタル化していこうとしています。

 Amazon Web Service(AWS)というのがあります。AWSはもともと、アマゾンがECサイトの大量のトラフィックをさばくために生まれたインフラです。それを自分たちで使ってもいいし、他者に売ってもいいということで、結果的に彼らの売り上げの小さくない部分を占めるに至りました。

 アマゾンはこれをフルフィルメントサービスにも広げて、SaaSならぬ「物流 as a Service」を提供しています。これらと同じように、「アセットマネジメント as a Service」を作ろうとしています。アセットマネジメント会社を作りたいとなると、投資家のeKYC(本人確認)から契約のフロー、登記や配当、売却といったパーツが必要になります。これらは今、すべて紙で処理していて、計測も改善もできません。これをデジタル化し、広く使えるようにしてきます。