ですが、業務の重い業界なので、業界の汎用的な課題を解くためにも、膨大なアセットの運用が必要になります。知られていないかもしれませんが、三井物産だけでもトータル1~2兆円のアセットマネジメントをしています。彼らはアセットを持っていますが、デジタル化については分からない。一方で僕らはアセットマネジメントについては分からないが、デジタル化はやってきていました。それならば、組んで新しいものを作っていこうという話です。
――これらのプロジェクトにおける開発は、自社のみで行っているのでしょうか。
今、社員数は合計で30人ほどです。今は基幹システムの開発をまるっと任せられるということではないので、切り出した一部のプロジェクトを担当しているというところです。なので、プロジェクトごとに5~6人くらいが関わっているので、スタートアップのプロダクトを開発するようなスピード感です。
――SIer的に動く企業であれば、いわゆるスタートアップのエンジニアと採用方針にも違いがありますか。
僕はGunosyでメディアのDXを手がけました。でも、「メディアの知識」というのはないんです。これは、DXについて理解するために大事なことだと思っています。
もちろん僕たちは業界知識については学ぶ必要があるし、パートナーとワンチームになって学んでいます。とはいえ大事なのは、「ソフトウェア技術の常識を、それがないところに輸出する」ということだと思っています。ですので、求める人材はスタートアップにいるエンジニアと変わりありません。
スタートアップの考え方の1つに「リーンスタートアップ(必要最低限の機能を持った試作品を短期間で作り、ユーザーの反応を元に作り上げていく手法)」というものがあります。これって、トヨタのカンバン方式をソフトウェアの業界に落としこんだものなんです。ミニマムなプロダクトを作って検証して、見える化し、スクラップ&ビルドでどんどん改善していくものなのですが、これはカンバン方式そのものです。
これからはその逆で、リーンスタートアップで鍛えたソフトウェア産業の知見や考え方を、あらためてリアルな産業に落とし込むタイミングです。機械学習のプログラムをどう取り入れるのか、データをどう計測するのかを考える。また、IoTの広がりによって、システムもソフトウェアで管理できるようになってきましたよね。それをどう使うかを考えていく必要があります。