新ファンドでは既存産業変革および新規産業創出をテーマに、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」「パブリックセクターイノベーション」「ディープテックイノベーション」という3つの投資領域に重点を置く。これまでのファンドでは創業期を中心した投資を行ってきたが、新ファンドでは1社あたり最大で約30億円を投資し、創業期からプレIPO期まで一気通貫でスタートアップを支援していくという。

刷新したロゴとタグライン
刷新したロゴとタグライン

同社は設立から10周年のタイミングを機に初のコーポレートリブランディングを実施するとともに、オウンドメディアを通じての情報発信も開始した。

この10年間で、日本のスタートアップ・エコシステムは大きな発展を遂げ、多様なバックグラウンドの起業家が増え、独立系VCやCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を含め、VCの数も増加した。このエコシステムの変遷をインキュベイトファンドの代表パートナーたちはどう振り返るのか。そして新ファンドに懸ける思いを聞いた。

「スタートアップ・エコシステム」10年の変遷

2008年にiPhoneが日本に上陸し、スマートフォンが少しずつ普及していく──そんなタイミングでインキュベイトファンドの1号ファンドは立ち上がった。そんな社会の変化を踏まえ、代表パートナーの本間真彦氏は「当時はスマートフォン上でのビジネスに可能性を感じ、その領域でのイノベーションに賭けていました」と振り返る。

「インキュベイトファンドは“インターネット”という変化の爆心地で、新しいものをどう広げていくのか。そんな思いからスタートしています。2010年頃はガラケーからスマートフォンに切り替わっていて、スマートフォンの画面上で一体どんなビジネスができるのか。そこに大きなイノベーションの可能性を感じていたので、当時はゲーム会社、もしくはゲームの周辺領域で事業を展開する会社を中心に投資をしていました。振り返ってみると、ゲームビジネスのエキスパートになろうとしていたんですよね」(本間氏)

当時、起業と言えば「C(コンシューマ)向けサービス」のイメージが強かったが、時代の流れとともに「B(ビジネス=法人)向けサービス」を手がける起業家が2013年頃から目立つようになってきた。また、インキュベイトファンド自体も2号、3号ファンドからLP(リミテッド・パートナー。有限責任のファンド出資者)の構成がIT系企業だけでなく、テレビ局などの事業会社や金融機関、政府系機関が名を連ねるようになった。