そんな競合を、tebikiはどう見ているのか。貴山氏に聞くと、返ってきたのは「一番の競合は、マイクロソフトのExcelとWord」という答えだ。

「確かに、僕ら以外にも現場をDXさせようとするサービスはあり、マーケットも伸びています。ですが、そもそも目指しているゴールが違うようです。僕らがやりたいのは、『手順書を作る』ことではなく『仕組み作り』。そういう意味では、10年以上も現場で使われ続けているExcelやWordが、僕らのライバルと言えるかもしれません」(貴山氏)

貴山氏いわく、仕組み作りに必要なのは「現場ノウハウのクラウド化」「OJTのDX化」「人事評価のDX化」の3つ。

「まず、今取り組んでいるのが、『現場ノウハウのクラウド化』。ある程度の現場ノウハウ動画が蓄積されたら、今度は誰にどう教えるかを自動で提案する『OJTのDX化』へ進める。最終的には、現場で働く方々のスキルを可視化し、管理者が適切に人材配置できる『人事評価のDX』ができればと考えています」(貴山氏)

社員への教育はできていても「誰がどんなスキルを持っているのか」「どれくらい業務をこなせるか」を管理している現場は少ない。そのため、適切な人材配置ができていないことも悩みの1つになっていた。これも、貴山氏の工場長時代の経験がもとになっている。

「当然ながら、現場教育やOJTは、人や機械によって状況が変わります。『単なる手順書作りサービス』で終わらないためにも、現場の方々が機能を使いこなし、アップデートし続けられるサービスであることが大事。tebikiで『使いやすさ』にこだわる理由は、ここにもあります」(貴山氏)

ピナクルズが考える現場教育のDX
ピナクルズが考える現場教育の3つのDX

1〜2年でサービスを磨き、2021年12月には単月売上10倍へ

ピナクルズはグロービス・キャピタル・パートナーズからの資金調達を受け、開発や営業、採用を加速させていくつもりだ。

「新型コロナウイルス発生以前に比べて『オンラインで集合研修できないか?』など、サービスに関するお問い合わせは倍になっている」と説明する貴山氏。ユーザー数は非公開だが、2021年12月末までに、単月売上10倍を目指すと宣言する。

tebikiは契約期間や初期費用を設けず、月10万円から利用できる。ユーザー1社に付き1人のスタッフが営業からカスタマーサクセスまでを担当し、ユーザーの行動観察はもちろん、深い課題や知見をすくい上げ、機能へ落とし込んでいく。

「解約は最も強いフィードバックです。だからこそ、もっと細かくフィードバックをもらえるようにしておきたい。そこで、1社につき1人の担当をつけて細かくコミュニケーションする。さらに、あえて初期費用をいただかないスタイルにして、自らプレッシャーをかけています(笑)」(貴山氏)