売上40億円の食品工場長時代に感じた、現場教育の課題

「tebiki」の画面イメージ。スマホのブラウザから教育用の動画を撮影・編集できる。 すべての画像提供:ピナクルズ
「tebiki」の画面イメージ。スマホのブラウザから教育用の動画を撮影・編集できる。 すべての画像提供:ピナクルズ (拡大画像)

tebikiを運営するピナクルズ代表取締役CEOの貴山敬氏は、旅行系スタートアップを立ち上げ・売却後、コーチ・ユナイテッドの取締役へ就任。クラウドワークスへの事業売却、クックパッドによる吸収合併後に退任。2018年3月に同社を創業した。

IT、テック業界のキャリアが長い貴山氏だが、旅行系サービスを起業する前には商社に所属しており、出向先の食品工場で工場長を務めていた経験がある。

「当時は、大手ピザチェーン店へ卸すための業務用ピザを作っていました。売上が40億円ほどある規模の食品工場だったのですが、一番苦労していたのが現場教育です。というのも、現場教育は属人性が高く、かつ現場の機械や人の動きを見ないとわからないことも多いため、現場での研修や実習が必須となります。しかし、多くの工場が教育に割けるリソースがない。そんな状況を何とかできないかという想いは、ずっとありました」(貴山氏)

例えば、工場における機械メンテナンス。当然ながら、機械が1つでも故障すれば、納期が遅れるだけでなく、社員たちも手持ち無沙汰になってしまう。だが、メンテナンスの教育コストは高く、最も学ぶべき内容はいち早い修理が求められる「故障時」に限られていたりする。そうすると、新人社員の出番はほぼなく、結果的にベテラン社員に頼りきりになってしまうことも課題だった。

そんな経験をヒントに生まれたtebikiは、現場のOJTをスマホで撮るだけでほぼ完了できる撮影・動画編集機能を実装。さらに、音声入力で字幕を生成でき、それを自動翻訳する機能も用意した。これはすべて、「現場で簡単に使える」を意識して開発されたものだ。

「現場の方にはパソコン入力が苦手な人もいるので、アテレコのように音声入力できるようにしました。電波がなくても使えるようにしたり、とにかく『何も考えずに使える』動画技術を用意したのです。

それに加えて、動画を見た社員が『これはできる・できない』を判断するボタンを実装。社員それぞれのスキルを可視化し、必要な動画をアジャストできるようにもしています」(貴山氏)

現在、tebikiはアスクルをはじめ、不二家やニッセイ、わかたけ、イセ食品といった大手が導入。簡単に動画を撮影でき、字幕も自動翻訳できる点が高く評価されていると貴山氏は語る。

tebikiが「仕組み作り」のために目指す3つのステップ

気になるのは、競合の存在だ。近年、スマホやタブレットの普及とともに、Wi-Fi環境も整備されてきたことで、tebiki以外にもスタディストの「Teachme Biz」やClipLineの「ClipLine」をはじめとした競合サービスがしのぎを削っている。