「普通、果物は冷凍するとぼそぼそとした食感になってしまうのですが、特殊冷凍技術によって、サクサクした新食感が実現しています。また、冷凍前のフレッシュな風味や甘味、香りもそのまま保たれているので、とにかく美味しい。一度食べてみてほしいです」(木下氏)

 果物は、ただでさえ日持ちがしない上、普通に冷凍すると、解凍後は食感が変わって味が極端に落ちる。そのためこれまでは、ジュースやジャムにするくらいしか、加工の手立てがなかった。その結果、国内の年間フードロス640万トンの中の減耗量では、果物のロスは31%に及ぶ。

「急速冷凍機で凍らせれば、氷の結晶の粒が小さいのでカチカチになりません。解凍しなくても、凍らせたままアイスとして出せると考えました。専属栄養士による実験や商社としての実績があったからこそ実現できたと思っています。まずは5年間で1万トンのフードロス削減を目標にしています」(木下氏)

“ゴミ”が“富”に変わるビジネス

 HenoHenoは、生産者にも消費者にもメリットのあるビジネスモデルだ。これまで捨てるしかなかった作物がお金になるため、生産者である一次産業に携わる人の財布は潤う。これまでマイナスだった物から収益が生まれるので、まさに“ゴミ”が“富”に変わる魔法のビジネスといえるだろう。一方、消費者にとっては、健康面でのメリットが大きい。

「果物は体に良いですが、日持ちがしなくて値段が高いため、購入の障壁が高い。HenoHenoは、冷凍なので日持ちしますし、そもそも廃棄するはずの果物を使っているので安価で仕入れられます。さらに、皮や種も取った状態で提供しているので、手間をかけずにすぐ食べられます」(木下氏)

 さらに、「健康経営」や「SDGs(持続可能な開発目標)」といった昨今の企業が取り組む経営課題の文脈から、オフィスでの導入も進んでいる。商船三井やロート製薬は、社員の福利厚生のひとつとして、HenoHenoを使用している。カロリーも低いので“罪悪感のないおやつ”として、ダイエットの味方にもなるため、社員からも好評だという。

サーキュラーエコノミーが狙い

 現状はデイブレイクの中でHenoHenoの製造・加工・販売のすべての領域をカバーしているが、「食品メーカーを目指しているわけではない」と言う。

氷屋3代目の“冷凍愛”が生み出した「フードロス」解決法デイブレイク代表取締役CEO・木下昌之氏 Photo by K.H.

「生産者に還元される循環経済をつくっていきたいんです。各都道府県にある果物の産地に加工場を作る予定です。地方には、使われなくなった空き工場が多いので、そこを加工場にできるんです。地方での雇用創出にもつながりますし、冷凍技術が地方の人に伝われば、特殊冷凍機を買ってもらえる機会も増えるはずです。私たちは、冷凍のノウハウと販路を提供することに特化していきたいと考えています」(木下氏)