「新しいサービスを行う上で、根付いた文化や風土に従った合意形成と、複数の業界を大きく巻き込む力が必要不可欠。商談の際、『自分たちができること』をそれぞれが一方通行で説明するのに終始してしまい進まないケースが非常に多い。イノベーターになるには、横断的なバックグラウンドをもち、枠内におさまらないことが重要だと思います」(中島氏)
大企業がGMSに惹かれる理由
GMSは2019年9月、シリーズDラウンドで総額17億円の資金調達を発表。第三者割当増資の引受企業は、デンソー、クレディセゾン、大垣共立銀行、日本ケアサプライ、三井住友トラスト・インベストだ。さらに、川崎重工業、大日本印刷、凸版印刷など、そうそうたる東証一部上場の大企業と資本提携をしており、上場企業の資本参加数は、国内のスタートアップでNo.1を誇る。
「基本的に、資本関係だけでなく業務提携まで行って、補完関係を築いています。社会課題を解決するエコシステムを構築するには、あらゆる企業との協業が必要だと考えているためです」(中島氏)
多くの大企業が惹かれる理由は、「仮想マーケットではなく、リアルマーケットを持っていること」にあるという。
MaaS(Mobility as a Service)領域のスタートアップは、市場のニーズからではなく、アイデアから始まるシーズ起点で事業が練られていることが多い。その場合、入り口は消費者向けのサービスを提供し、そこから取れたデータを使って最終的には法人向けのビジネスに発展させようと考えているのが主流だ。しかし、GMSの場合は違う。最初から最後まで消費者に向けたサービスになっているのだ。
「私たちは明確な社会のニーズを起点にしたビジネスモデルになっています。消費者のためのサービスですから、答えは常に消費者が持っている。だから、市場調査をして確実なニーズがあれば、あとは土俵さえ整えばすぐにマネタイズができます。提携企業からは、その市場の確実性に魅力を感じてもらっているようです」(中島氏)
グローバルスタートアップとして成功する秘訣
もうひとつGMSの特筆すべき点は、海外で成功を収めているところだ。世界進出を狙う企業が多いが、常にグローバルな目線をもってビジネスを進めるのは難しい。GMSがグローバルスタートアップとして成功した理由はどこにあるのか。
「日本の市場から入って、後からグローバルに目を向けてもずれる。日本は進化しすぎていますから、最初から尺度をグローバルに合わせてモデルを作る必要があるんです。当社の場合、テクノロジーは世界共通ですが、サービスは各国でローカライズしています。毎月の支払額やローン、金利、利用形態、宗教も国によって違うので、現地の人々の生活に根差すことが何より大切なのです」(中島氏)