小学生で「経営者になる」と決めた
――起業を志したきっかけを教えてください。
小学4年生の七夕に、「経営者になる」という夢を短冊に書きました。祖父も父も経営者でしたから、同じ分野で彼らを抜かしたかったんですね。
父がデザインフィルというデザイン会社を経営しており、私が通っていた学校のクラスメイトの多くが父の作った文房具を使っていました。作るところから消費者に届くまでを近くで見ることができたので、幼心にビジネスの感触は理解していたと思います。
――経営者を夢にするのが随分早いですが、會田少年はその後どのように成長したのでしょうか。
「経営者になりたい」という夢をもったのは早かったんですが、どの分野で起業するかをずっと探していました。これがなかなか見つからず苦戦しました。“すべき”ことはすぐわかりますが、“やりたい”ことを見つけるのはとても難しかったです。
――いつやりたいことが見つかったのですか。
結局、見つかりませんでした。
大学2年の時、アリゾナに留学していたんですが、友人がホットドッグのEC販売を始めたんですね。私は「失敗するだろうな」と思いながら横で見ていると、案の定失敗しました。でも、その友人が失敗した直後に、「次何やろうかな」と言ったんです。その時は衝撃を受けました。「やりたいことが見つからない」のを言い訳して、何もせずにいた自分に気付いたんです。
それからは、「面白い人と面白いことやっていればいずれやりたいことは見つかる」と仮説を立てて、“何でもやってみよう”という精神になりました。
――ただ、大学卒業後すぐには起業せず就職しているんですね。
一度オーナーシップを捨てて修行しようと、三菱商事に入社しました。入社6年目で、ウクライナに駐在している際に、ふとこのまま安定を好みぬくぬく生きる自分を想像して怖くなりました。
目の前の仕事をバリバリやることに気持ち良くなって、一歩踏み出せていないことに改めて気付き焦ったんです。そこで、すぐに起業することを決心しました。
“努力のベクトル”を定めることが大事
――学生時代から何度も起業家精神を忘れかけては持ち直し、今があるんですね。
私が遠回りしたのは、“できない”ことに目を伏せて、“やれる”ことを増やしてしまったせいです。それではいつまでも挑戦できないので、とにかく夢中になって飛び込むしかないと、回り道してやっと気付きました。
また、起業は手段でしかありません。つい、成功への近道を探して正解を求めてしまいますが、ウルトラCは存在しない。地道にやっていくしかないのだと思います。