売り手市場だからこそ
重要な「人間力」

 就職氷河期など買い手市場(企業優位)の時代には、就活に関する細かなスキルやテクニックが重要だった。しかし、採用のルート・形態に加えてインターンシップの条件見直しも進む中、通り一遍の知識やスキルでは乗り切れない。

「売り手市場」(学生優位)とはいえ業種によって求人倍率はまったく違う(前ページの図参照)。小手先のテクニックではなく、自分自身の意思と努力で不確実性を乗り切る「人間力」が問われる時代が到来した。「人間力」で負ける学生はとことん負け、勝つ学生はとことん勝つと肝に銘じておきたい。

「人間力」について政府では「社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と定義している(内閣府『人間力戦略研究会報告書』2003年)。

 この定義は今でももちろん通用する。これから社会に出ていく就活生に当てはめれば、社会において自らのキャリアをどう組み立てていくか、そのためにまずは「目の前の就活において全力を尽くせるかどうか」が鍵を握る。

 日本の教育は受験勉強を中心に“正解”に早く効率的にたどり着くことをよしとしてきた。さらにデジタル社会においてはインターネットを使えばさまざまな情報が簡単に手に入る。就活においても世間や周囲がイメージする正解、つまり有名企業、大企業の内定獲得に効率よくたどり着こうとする競争になっていないだろうか。

 その結果、下手をすると複数の内定を持ちながら一社に絞れなかったり、一社に決めても「この会社でよかったのだろうか」と内定ブルーに陥ったり、さらには入社してから「何だか違う」といった入社後ギャップを感じたりする。

「人間力」とは企業にアピールするものではなく、社会に出ていく自分を磨き、自らの人生を実り多いものにするためのものだ。

 折しも文部科学省では、小中高の教育現場において「新学習指導要領」の導入を推進している。

 そこでは、社会に出てからも課題解決力を発揮し、自分で自分の道を切り開いていける「生きる力」を持つ子どもを育てることが意図されている。

 新学習指導要領で学んだ大学生が社会に出るのはまだ先だが、これからの就活で学び舎で身に付けた「生きる力」が試される場になることは間違いない。