「キャリアの出発点」として
就活を捉え直す
多くの人は「仕事」を通して経済的に自立し、自分の存在価値を発揮し、多くの人と出会う。充実した人生にとって「仕事」の果たす役割は極めて大きい。そうした仕事の経験や実績の積み重ねが「キャリア」だ。
下の表のように、今はキャリアを巡る新たな潮流がどんどん生まれている。
キャリアの組み立て方について参考にしたいのが、キャリア学における「キャリア探索行動」と「計画的偶発性理論」だ。「キャリア探索行動」とは、就職に向けた準備的な行動のことで、自己理解を目的とした自己探索と、職業や業界・企業についての理解を目的とする環境探索の二つがある。
「両者は密接な関係があり、自己についての理解を深めるとともに、具体的な職業や業界、企業に関する情報を収集し、将来の自分のありたい姿ややりたいことなどを基に、ESの提出や面接への参加を行うことが大事。これらが浅いまま就職活動を行い、複数の内定を得ても、納得感がなかなか高まりません」(リクルート就職みらい研究所所長の栗田貴祥氏)
もう一つの「計画的偶発性理論」は、米国の心理学者ジョン・D・クランボルツ教授が1999年に発表したキャリア論だ。ビジネスパーソンとして成功した人のキャリアを調査したところ、ターニングポイントの8割が本人の予想しない偶然の出来事によるものだったという。
「計画的偶発性理論」では、予期せぬ出来事がキャリアを左右することを前提に、偶然の出来事が起きたときの行動や努力が新たなキャリアにつながること、そして何か起きるのを待つのではなく、意図的に行動することでチャンスが増えることを重視する。
「キャリア探索行動」や「計画的偶発性理論」は、就活においても当然有用だ。キャリアの成功の多くは偶然からもたらされる。しかし、ただ偶然を待っているだけではうまくいかない。手を抜かず、自分ができることに全力で取り組み、うまくいかないときは別のアプローチを考える。その先に自分らしい納得のいく就活があるのではないか。
アフターコロナの時代、就活をきっかけに自分と真摯に向き合ってみたい。それは、コロナ禍で苦しい経験をした先輩たちより難しいことかもしれない。だが逆に、そこから大きな可能性も生まれるはずだ。