ホテルのレストランなどで、ずっとワインを飲んでいらっしゃるお客さんがいたら(そろそろお口の中をリフレッシュされたいのではないかと)お客さんの所作・しぐさから判断して、言われる前にお水を出す。最近は少なくなってきていますが、メイン料理のあとにそろそろ爪楊枝が欲しいタイミングではないかと判断して爪楊枝をお出しする。こういったことが、ホスピタリティとして語られることが多いのですが、実はこれはサービス業に限ったことではなく、ビジネスの世界でも一般の生活の中でもごく普通にあることだと思います。

 何かやってほしいことがあったりすると、こちらから何も言わずともやってくれる人がいます。「あの人は気が利くな……」、そんなふうに思う人があなたの周りに1人や2人いるでしょう。仲間にそういう気が利く人がいたら助かりますし、あなた自身がそうなれたら、仲間や上司からの評価、評判が上がります。何よりそういう人がいるチームは元気で、パフォーマンスもいいはずです。

 気が利くということは相手の気持ちを考えた気くばりです。AIは言わないと気を利かせることができません。気くばりが上手にできるということはまさにホスピタリティを体現していることにほかなりません。

 誰もが簡単にこのホスピタリティを身につけられるかといえば、そうとは言えません。生まれながらこのスキルを持っている人は、ごくわずかでしょう。やはりこれも最初は、「こうしよう」と意識してやることです。だんだん自然にできるようになります。

相手に感度を合わせる

 実際に意識的に気くばりをするとはどういうことなのでしょうか?

 目の前にいる人がどういう感情でいるのか、を推し量る。これに尽きると思います。

 相手が何をしたいと思っているのか? どう感じているのか? 相手の感覚に自分の感度を合わせます。AIが苦手とする共感そのものです。

 相手の言葉だけでなく、その人が発している言葉以外の所作や表情からその人の感情を察します。このためのアンテナは、誰もが持っています。