定年までの15年、働かずに逃げ切るのは無理

――「働かないおじさん」は、若手層からも批判が出ますよね。

 人事の方々の裏話で、仕事を放り出したミドル層が「びっくりするぐらい辞めないんですよ」という本音をよく聞きます。

「働かないおじさん」に辞めて欲しいのに、「若手や、辞めて欲しくない層ばかりが辞めていく」というのです。

 苦肉の策で作ったのが、職務内容に応じて給与を変えることのできる「日本型・ジョブ型雇用」なのかもしれません。実現したいのは、企業が持て余している社員に関してもジョブに応じて給料を変えられる、ということなんだと思います。

 しかし、労働法制度が長期雇用を前提に組み立てられているなかでそれを行うので、海外のジョブ型雇用とは、まったく違うものが生まれるのだと思います。

――立ち位置があいまいになってしまったミドル層について、企業はどうすればいいのでしょうか?

 対処法としては、役割を作るしかないのではないでしょうか。

 フィードバックがない状態を改善することと、その人がやっていける仕事を渡すしかない。

 いざ定年退職までの残り時間が少なくなってくると、これからどうしようか、どうやって自分を活かそうか、と考えるものです。

 しかし、それでは遅い。そのようなことを、「働かないおじさん」になってしまう前に考える必要があるのでしょう。

 あと数年なら「逃げ切れる」と考えることには妥当性があります。

 ただし、無理ですよ。10年、20年、30年と、先が長いのに「逃げ切ろう」とするのは。

――現状は、「腐る前になんとかしよう」じゃなくて「腐った後に、元に戻せないか」という流れになっているように感じます。

 人材を腐らせないようにしなきゃならないのに、腐った後になんとかしよう、と言っても難しいと思います。

 企業としては、もっと早くから手を打つ必要があります。

 ミドル層本人としては、フィードバックがない状態を改善するために、まずは管理職と話をすることでしょう。

 話しかけられるのを待つのではなく、自分から「フィードバックを取りに行く」こと。いわゆる「フィードバック探索行動」も大事です。

 フィードバックを自分で取りに行くというのは、若手だけじゃなくて、ミドル層にも必要です。

 若手は放っておいても、周りの人がいろいろ言ってくれますが、そうした機会は年齢や役職が上がるにつれて減っていきます。

 自分の仕事ぶりや成果に対して、誰も何かを言ってくれなくなるというのは、怖いことだと思います。自分を客観的に振り返る機会を失っているわけですから。

 その時に、自分からフィードバックを求めていくという姿勢が、ミドル層には大切なのではないでしょうか。

(取材・文 間杉俊彦)