2027年開業が危ぶまれているリニア中央新幹線。いまだに静岡工区の着工のめどが立たない。これまで県とJRで議論が進められてきたが、工事が進まない根本原因は何なのか。ジャーナリストの池上彰氏が、静岡・川勝知事の元側近で、現在静岡市長を務める難波喬司氏に直撃した。(ジャーナリスト 池上 彰、静岡市長 難波喬司 構成/梶原麻衣子)
いちゃもんを付けて
工事を延ばそうとしているように見える
池上 リニア中央新幹線の問題は、川勝平太知事の強硬で長期にわたる「リニア建設」への姿勢によって、静岡県という一地方のテーマから、日本中が関心を抱くテーマになりつつあります。
川勝知事をはたから見ていると「一体、何がしたいのか」と思うのも事実で、トンネル工事の影響によって変動があるとされている大井川の水量の問題がある程度片付くと、今度は土砂・残土の問題を持ち出して、リニアの施工主であるJR東海に突き付けている格好です。
当然、リニアそのものに反対なのだろうと思っていたら、実は「リニア中央新幹線建設促進期成同盟会」というリニアの早期実現を目指す会に川勝知事も参加していたりする。一体、川勝知事は何を考えているのか。
客観的に見ると、やりたくないんだけどいまさら国策を「やめる」と言うわけにもいかないから、いろんないちゃもんを付けて引き延ばそうとしているかのようにも見えます。副知事という元側近の立場だった難波市長はどうお考えですか。
難波 実際のところはご本人にしか分からないと思います。促進すると言いながら、かなりリニアに批判的なことを言っているのも確かなので。
例えば国土交通省は10月20日に「リニア開通後は東海道新幹線の静岡県内6駅(熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松)への停車の本数が最大で1.5倍に増える」という試算を公表しましたよね。これに対する川勝知事の発言は、報道で見る限りではかなり批判的なものでした。
池上 「内容がお粗末だ」「10カ月かけたとは到底思えない」「大官僚組織がやることか」などと、けちょんけちょんでしたね。
難波 これはあくまで国交省が出している試算で、JR東海が出したものではないなど、言いたいことがあるというのは分かります。しかし、何もそこまで言わなくてもいいだろう、と。