野党の存在感が薄れ
自民党の「補完勢力」に

 その理由は、肝心の「政策面」で、自民党への明確な対立軸を打ち出せていないからだろう。

 というのも、自民党は英国の「保守党」と「労働党」を合わせたような「包括政党(キャッチ・オール・パーティー)」という特徴を持つ。

 いわば、自民党は日本国民のニーズに幅広く対応できる、政策的にはなんでもありの政党だ。野党との違いを明確にするのではなく「野党と似た政策に予算を付けて実行し、野党の存在を消す」のが自民党の戦い方である。

 実際に、これまでの自民党は野党が考え出した政策を取り込み、野党の支持者を奪って長期政権を築いてきた。その具体的な政策は、直近であれば「全世代への社会保障」「子育て支援」「女性の社会進出の支援」などがある。

 これらは、本来であれば「左派野党」が取り組むような社会民主主義的な政策だといえる。そうした経緯もあり、現在の立憲民主党、社民党、日本共産党などは、自民党の「補完勢力」に成り下がっている状況だ。

 その状況下において、立憲民主党の泉代表は昨年末、有識者からの「立民は何も政策提言していない」という批判にSNS「X」(旧Twitter)で反論。「物価高騰で厳しい状況にある家計・事業者等への支援」「物価を上回る賃金上昇の実現に向けた支援」などの政策を打ち出していると述べた。

 だが、「低所得世帯への給付」などは自民党も進めている。立憲民主党が家計の支援を打ち出したところで、与党である自民党が予算を付けて実行すれば、自民党の手柄になってしまう。有効な差別化戦略を打ち出せているとは言い難い。

 また立憲民主党は、直近2回の国政選挙で掲げた「消費減税」を、次期衆院選公約に明記しなかった。政権交代を目指す「責任政党」の姿勢を強調するためだという。昨今の政局に鑑みると、自民党との差別化を図るなら「減税」を打ち出すのが有効な手だてのように思えるが、それを捨てては、ますます存在感が薄れてしまう。

 このように「自民党の左傾化」「野党の補完勢力化」が進む現在の日本政治は、もはや「保守VSリベラル(革新)」という従来の枠組みでは説明できなくなっている。