「弱者救済」ではなく「勝ち組」を目指す
「デジタル・イノベーショングループ」とは?
「社会安定党」は、デジタル化などについていけない「負け組」「弱者」を守るためにある。現在でいえば、自民党・公明党の連立与党と、両党を補完する立憲民主党・社民党・日本共産党・れいわ新選組などで構成される。
与野党が混在する同グループの政策は、(1)弱者・高齢者・マイノリティー・女性の権利向上、(2)同一労働同一賃金・男女の賃金格差解消、(3)外国人労働者の拡大・斜陽産業の利益を守る公共事業の推進、(4)社会保障や福祉の拡充・教育無償化――などだ。
いわば、社会の急速な進化と、それに伴って生じる格差から「負け組」を守るシェルターを作ることが「社会安定党」の役割である。
一方、政治の外側にいる「デジタル・イノベーショングループ」には、SNSで活動する個人(インフルエンサー)、起業家、スタートアップ企業・IT企業のメンバーなどが含まれる。
彼・彼女らは「勝ち組」を目指す「強者」である。第一の関心事は、自分の利益でありキャリアアップだ。加えて、日本のデジタル化やスーパーグローバリゼーションなど、社会の発展にも関心がある(第249回・p2)。
そのため、「社会安定党」と「デジタル・イノベーショングループ」の思想・信条は大きく異なっている。
もし「デジタル・イノベーショングループ」が野党のいずれかを支持すれば、その政党は「社会安定党」を抜け出し、自民党の対抗馬になるだろう。だが今のところ、彼・彼女らの支持に値する政党は出現していない。
本連載ではかつて「デジタル・イノベーショングループ」から支持される可能性を秘めた政党として、日本維新の会(以下、維新)に期待していた(第329回)。
だが結局のところ、維新の改革の中身は、地方分権・行政改革・規制緩和など「90年代の自民党」に似た「古さ」を感じさせるものにとどまっている。「インターネット投票の実現」「中央デジタル通貨の研究開発」といった政策提言を行ってはいるものの、与党でないこともあり、実現可能性は乏しい(参考資料)。
維新の馬場伸幸代表が「維新は第二自民党」と発言するなど、「自民党を支持する保守層を取り込む」という発想から脱却できていない点も気掛かりだ。このままでは、維新は「社会安定党」を構成する勢力に成り下がってしまうだろう。
かといって、「デジタル・イノベーショングループ」が自民党を支持することもない。確かに自民党は「デジタル庁」を立ち上げて、マイナンバー関連をはじめとするデジタル政策を推進してきたが、日本のデジタル化は他の先進国よりも相当に遅れている。その水準は、彼・彼女らが到底満足できるものではないからだ(第312回)。