「勝ち組有権者」がスポンサーとなって
「第三勢力」を作る時代に!?

 では、「デジタル・イノベーショングループ」は今後、どのような形で「社会安定党」に対抗していくのか。

 この点について、昨年放送されたインターネットテレビ番組『ABEMA Prime』で、実業家の堀江貴文氏が注目すべき発言をした。具体的な発言内容は以下の通りだ。

「(自民党に対抗できる勢力は)マネーと志と戦略があったら作れる」

「前明石市長の泉房穂さんは、次の総選挙で政権を取れるぐらいの発言をしている。(中略)彼のところに前澤友作のような人が1000億円を入れると言ったら政治は変わる」

「そこにインフルエンサーも絡んできたら、小選挙区も比例も一気に獲得して、政権交代する可能性はあると思う」

(※詳細は、23年12月1日付のニュースサイト『ABEMA TIMES』を参照した)

 堀江氏による一連の主張は示唆に富んでいる。

「デジタル・イノベーショングループ」が後ろ盾となって、自分たちの思想に合う起業家や無所属の政治家などを擁立し、資金・集票力の両面で支援する。同グループのインフルエンサーが影響力を生かし、支援したい人物の認知度向上に一役買う。この動きが本当に実現すれば、自民党に取って代わる第三勢力が、既存の対立項の「外側」から突然やって来るかもしれない。

 余談だが、前原誠司氏が先日、国民民主党を離党して「教育無償化を実現する会」を結党した。しかし「教育無償化」が軸では、先述の通り「自民党の補完勢力」の域を抜け出せないだろう。前原氏が「非自民・非共産」を掲げて勢力を拡大したいならば、「デジタル・イノベーショングループ」と接触し、その力を生かす方策を練ってはいかがだろうか。
 
「新しい対立軸」に話を戻すと、「勝ち組」であることを志向する「デジタル・イノベーショングループ」の力を借りて、特定の人物や政党が影響力を持つことにはリスクが付きまとう。民主主義の思想の根底にある「全ての人間は平等である」という原則が崩れかねないためだ。

 質の高い教育を受け、ビジネスやITに精通し、資金力のある「勝ち組」が政治に関わる。そして、日本のさらなる成長やデジタル化を目指していく。その流れは「弱者救済」を志向する昨今の政治とは明確に異なる。もしかすると、国民の優勝劣敗が鮮明になり、格差が広がるかもしれない。

 その良しあしや実現可能性をここで論じるつもりはないが、「新しい対立軸」が民主主義の否定につながる懸念があることを、われわれは自覚しておく必要があるだろう。