「保守VSリベラル」ではない
日本社会の「新しい対立軸」とは?
先ほども述べたが、現在はあらゆる政党が「弱者救済」を志向しており、似通っている政策が多い。その一方で、今は自民党・野党を問わず、さまざまなイデオロギーを持つ政治家が増えている。
もともとは保守系だが、マイノリティーの権利保護に熱心な政治家。本来はリベラル系だが、安全保障政策の拡大を主張する政治家――。
所属政党に関係なく、一人一人の政治家が多様な考え方を持ち合わせる時代になっているのだ。この入り組んだ状況を、「保守VSリベラル(革新)」という単純な対立項で論じるべきではないだろう。
にもかかわらず、政治学の世界では現在、「ネオ55年体制」という言葉が流行している。
自民党が優位である構図と、与野党のイデオロギー的な分極化が、かつての「55年体制」と似通っているというのだ。言うまでもなく、筆者はこの考え方に違和感がある。
現在の政局が「55年体制」と同じに見えるのは、政界の極めて細かい部分に着目しているからだろう。確かに憲法や安全保障政策の細部を巡っては、与野党は相変わらず論争を繰り広げている。だが視野を広げれば、「弱者救済」という根本は同じである。
また少数派を除けば、多くの政党は「台湾有事」「北朝鮮のミサイル開発」といった脅威について、対話などを通して現実的に対処するしかないと考えている。東西冷戦期と比べれば、集団的自衛権の解釈や武力行使を巡る「大きな分極」は存在しない。
では、今の日本社会に存在する「新しい対立軸」が何かというと、政治の「内側」対「外側」だ(第294回)。政治家と一部の有権者の間で分断が起きており、今後さらに加速する可能性が高いとみている。
どういうことか説明しよう。筆者の見立てでは、今の政治の内側には「社会安定党」と呼ぶべきグループがある。その対抗勢力として、政治の外側に「デジタル・イノベーショングループ」と呼ぶべき集団が出てきている。