半世紀にわたる「新築優遇」は
これから先、いつまで続くのか
24年2月から、子どもの人数に応じて金利を引き下げるフラット35の新プラン「子育てプラス」もスタートする。この財源は、23年度補正予算だ。
昨今、子育て世帯への手厚い優遇施策の開始が相次いでいるが、不動産市場に与える影響は限定的だと考えられる。24年度税制改正によって、子育て世帯の住宅ローンの借入限度額が据え置きになる改正が加えられたのは、新築住宅および買取再販住宅だけだからだ。
中古住宅については今回の改正前から現状維持が決まっており、24年度税制改正によって控除額が大きくなるわけではない。
新築住宅においても、税制改正によって借入限度額が据え置きになったことで変わる控除額は、13年間を通してせいぜい50万円程度。1年当たりでいえば、3〜4万円だ。住宅ローン減税規模の減税制度が新たに始まるといったことがあれば別だが、これくらいの控除額のアップであれば、現在、住宅購入を考えている人を少し後押しする程度だろう。
そもそも、今や新築住宅を購入できる層は限られている。コロナ禍で旺盛になった住み替え需要はすでに一巡しており、新築住宅は一般的な収入の世帯には手が届かない金額にまで高騰しているからだ。局所的かつ小規模な新たな優遇措置が、市場に大きな変化を与えるとは考えづらい状況にある。
住宅ローン減税の新築優遇、新築住宅の固定資産税優遇、新築を優遇する補助金などの支援事業といった、新築住宅を優遇する制度は継続している。24年度税制改正でも、新築住宅の固定資産税の優遇措置は延長された。新築住宅の固定資産税減税は「時限立法」としながらも、1964年から半世紀以上続いている。
23年12月に空き家等対策特別措置法が改正されたが「空き家対策の推進」と「新築住宅の優遇」は本来、逆行するものだ。しかし、「新築住宅が売れなくなると景気が悪くなってしまう」という先入観のようなものが邪魔をし、ちぐはぐな政策が引き続き惰性で行われている。
他の先進国ではずいぶん前に見られたような、新築住宅優遇から中古住宅・リフォーム優遇へのシフトは、財政破綻でもしない限り実現は難しそうだ。
※詳細な調査レポートについては、さくら事務所のホームページを参照