3)職務の矮小化現象
⇒自分が使っている手法以外の新しいメソッド・ツールが生まれても、目に入らないこと

 1)職務定義の刷り込み誤認と2)お手本依存症が同時に起こると、この「職務の矮小化現象」が生じます。

 この現象に陥ると、便利なツールがあるのに、それを使わず非効率なやり方で仕事をすることになります。当然、生産性は上がらないですし、最新のトレンドもキャッチできません

 予防するには、ビジネスの最前線の情報を、マネジメント層が現場社員にきちんとシェアする必要があります。

4)数字万能病
⇒数値化されたデータだけでものごとを判断できると勘違いすること

 数字は有能ですが、万能ではありません。いま現在、デジタル化によってあらゆるものがデータ化されたことで、現場や実物を見ずに数字だけで判断することが横行していると思います。

 実際にあった、面白い事例を紹介します。
 
 当社の札幌本社ビルにあるコンビニの栗饅頭があまり売れていないという情報を知ったとき、私は「売上不調の原因を考えてごらん」と社員に指示しました。

 そこで、社員たちは、「札幌市の栗の消費量」や「今年の冬の気温」など、様々なデータを調べて、仮説を立ててくれました。

 しかし、真の原因は、栗饅頭が置いてある棚の通路が狭くて、買いづらいというシンプルなものでした。これは、現場の店舗に足を運べば一発でわかることなのですが、社員たちはパソコン上の数値ばかりを見ていたので、気づけなかったのです。
 
 私の経験上、数字だけで7割くらいまでは判断できると思っています。しかし、残りの3割は現物を見ないとわかりません

 あたかも数字が「万能な判断基準」であるかのように勘違いしないよう、注意しなければいけないのです。

5)フォーマット過信病
⇒ある勝ちパターンが黄金法則だと過信して、何に対しても同じアプローチをしてしまうこと

 これが最後の企業組織病で、2)お手本依存症の一種でもあります。たとえば、大衆車用の広告でうまくいったパターンを、高級車の宣伝に使うようなものですね。

 私自身、かつて営業をやっていたときの苦い思い出があります。大型受注に成功した先輩の企画書の中身や、商談時の決めゼリフを教えてもらって、それをそのまま自分の顧客にぶつけたところ、見事にコケたのです。

 顧客にはそれぞれ異なる課題があって、全く違う権限・予算を持つ担当者がいるのに、同じアプローチをとっても成功するわけがありません。

 ネットの発達による「コピー文化」が浸透したことで、フォーマット過信病はますます広がっていると思います。個別のケースごとに、「本当に使えるフォーマットか」をきちんと吟味することが必要不可欠です。
 
 次回は、どのようにして当社が企業組織病を克服したか、「チームの変革=チームX」のポイントを解説します。

(本稿は、新刊『チームX』刊行記念セミナーの講演ダイジェスト記事です)