「老化を止めて若々しくなるための方法を教えましょう」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)
「老化」の原因とは?
「最近、急に老けた」
そんな悩みを持っていませんか?
人間の「老化」は常に一定方向で、巻き戻しはできない。
そんなことは当たり前と認識されていますが、じつはこの「老化」というプロセスは、「ストレス」によって変化することがわかっています。
「ストレスは万病のもと」という言葉があるほどに、ストレスは人間の体にさまざまな変化を引き起こすことは科学的にも認められています。
ストレスによって気分が落ち込んだり、睡眠障害を引き起こしたりするなど、精神的な影響は一般的ですが、ストレスが大きすぎると高血圧や胃潰瘍など、人体に多大な影響を及ぼすことも明らかとなっています。
そんなストレスですが、最近の研究によって、私たちの「老化」プロセスにも関連していると示されています。
学術誌『セル』に掲載された研究によると、手術や新型コロナウイルス感染症の重症化、妊娠など、大きなストレスを伴う状況では生物学的な老化が急速に進行することが示されています。
「老化」のプロセスを止める方法
あなたの周囲にも「急に老けた」と感じる人はいませんか?
白髪が増えたり、シワが目立つようになったり、急激に体重が減少し、肌荒れが起こったりと目に見える変化が起こることがあります。
そんなストレスによる老化ですが、じつは外見だけでなく、精神面や脳にも影響するとわかっています。
耳の聞こえが悪くなったり、記憶力が悪くなって忘れ物をしたり、仕事中や大事な場面でぼーっとしてなにもできなくなったりと、「もしかして自分は認知症かもしれない」と思うような状態になってしまいます。
これほど私たちの「老化」というプロセスには「ストレス」が大きく影響するのです。
ただ、同じ研究の中で「ストレスを減らすことで老化も逆転できる」ということも示されています。
あなたの周りにも、「仕事をやめた途端に若々しくなった」とか、「育児がひと段落して肌ツヤが良くなった」など、ストレスが減ったことで若返ったように見える人もいるでしょう。
そんな人は外見だけでなく、ストレスから解放されたことでハキハキと話したり、活動的になったりと思いっきりエネルギッシュに見えることだってあります。
私たちが普段考えている以上に、人間の「老化」とは柔軟なプロセスであり、進んだり、また戻ったりと、私たちの普段の生活に影響を受けているのです。
ストレスを減らして、楽しいことを見つけて、日々を彩る。
たったそれだけでも、私たちは若返る可能性を秘めているのです。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)
【参考文献】
Biological age is increased by stress and restored upon recovery.
Poganik JR, Zhang B, Baht GS, Tyshkovskiy A, Deik A, Kerepesi C, Yim SH, Lu AT, Haghani A, Gong T, Hedman AM, Andolf E, Pershagen G, Almqvist C, Clish CB, Horvath S, White JP, Gladyshev VN.Cell Metab. 2023 May 2;35(5):807-820.e5. doi:10.1016/j.cmet.2023.03.015. Epub 2023 Apr 21.PMID: 37086720
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。