2017年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの魔法』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。

ありがとうの魔法Photo: Adobe Stock

多くの勉強をしても、それを「実践」しなければ、何も知らないのと一緒

「本当の自分は、別の人格を持っているはずだ」という信念を持って、「自分探し」を続けている人がいます。

「本当の自分はどこか別にあるはずで、誰かがそれを教えてくれる」と信じて、あちこちで開かれる講演会やセミナーに参加し、「勉強」を続けているのです。

「もっと自分を向上させたい」という気持ちはよくわかりますが、「自分探しの旅」に力を入れすぎると、それで気が済んでしまい、いちばん大切な「実践」がおろそかになる可能性があります。

 ある人(Aさん)が私に、「こんなものがあります」と言って、たくさんのものを見せてくれました。絵、カード、ペンダント、水晶、陶器など、20種類くらいあったでしょうか。Aさんは、それだけのものをカバンの中に詰めて、いつも持ち歩いているのだそうです。

 また、Aさんはセミナーに参加するのも好きで「あの人のセミナーを受けたことがある」「あの人の講演を聞いたことがある」とたくさんの講師の名前を口に出しました。

 Aさんが私たちの集まりに参加したとき、参加者のひとり(Bさん)の発言が気に入らなかったらしく、私にこう言いました。

「Bさんが参加する以上、私はもう、この集まりには参加しません」

 ようするに、「自分を参加させたければ、あの人を参加させないでほしい」と言いたかったようです。

 人格上の勉強や研鑽を積んできた人の発言としては、あまり歓迎できるものではありません。たくさんの勉強をしてきた人の口から、そのような言葉が出てきたのは、とても意外なことでした。

 多くの勉強をしても、その勉強が「日常の行動」につながっていなければ、それは意味がないことだと私は思います。

 多くの人から多くのことを聞き、多くを学んだ結果として、「常に、人を憎まず、恨まず、呪わず、誰に対しても同じ態度で接すること」が、日常の実践なのではないでしょうか。

「あの人が来る限り、自分は絶対に行かない。だからもし、自分を参加させたいと思うなら、あの人を参加させないで」という考えは、かなり傲慢だと思います。

 たくさんの本を読み、たくさんの講演会やセミナーに参加すると、「自分が成長し、向上した」ように思ってしまうことがあります。

 しかし、本を読んでも、人の話を聞いても、それだけで成長することにはならない気がします。

 学んだことを自分の日常生活の中に取り入れ、「実践」すること。それが「向上する」「成長する」ということです。

 どんなによい話を知っていても、それを行動に移さなければ(実践しなければ)、何も知らないのと一緒だ、というのが私の考え方です。

「自分探し」をして、多くの会に参加したり、人の話を聞いて勉強することは悪いことではありません。

 けれど、そこで安心しないこと。安住しないこと。それがとても大切です。

 私たちが「何のためにそのような勉強をするのか」というと、結局は「実践するため」ということ……、に尽きるのではないでしょうか。