失敗から見えてきた
仕事にとって重要な3つの事柄
仕事をするうえで大切なこと1
「給与を払う側の気持ち」が、よくわかった。社員は毎月給料がもらえることを当たり前だと思っているけど、顧客は毎月お金を払うことを当たり前だと思っていない。この差を埋めるのは、とても難しい。
これって、すごくつらいんだよ。でも、社員にその気持ちになってもらうことはおそらく無理だと思う。そういう気持ちの人は、たぶん自分で会社をやっている人だしね。
たしかに、多くの経営者が悩む理由のNO.1はこの手の話かもしれない。でも、それを社員に求めるのは経営者の甘えだ、という彼の気持ちが伝わってきた。経営者としての矜持を背負い続けた彼の悲哀が垣間見えた。
仕事をするうえで大切なこと2
「利益」というものがどれだけ大事かわかった。会社員のときは、「会社に大きな利益が出ると、自分の給料が減らされている」と思ったよ。でも、会社をやっていると、大きく税金も取られるし、社員の社会保険も払わなければならない。何より、取引が突然なくなっても、社員には給料を払い続けなくちゃいけない。だから、会社にできるだけお金を残しておきたい、と強く思った。笑っちゃうだろ?経営者になって、ほとんどお金のことしか考えられなくなった。
彼は独立前、生粋の技術者だった。「自分の好きなことをやるために独立する」と、彼は言っていた。しかし、彼の言うように「お金のことしか考えられなくなってしまった」経営者はおそらく多いのだろう。
仕事をするうえで大切なこと3
安達裕哉 著
「大きなビジネスを描くには、まず安定した収入が必要」だということかな。大きなビジョンを描いて、ビジネスモデルをつくる、なんて高尚なことはまったくしていない。自分がやっていたのは、ほとんど金策ばかりだったよ。得意先に電話をかけて「仕事ないですか?」と聞いたり、「紹介してください」って頼み込んで、取引先を増やしてもらおうとしたり。そんなことばかりに時間を使っていた。
天才的な経営者が「とんでもなくすごいビジネスモデルをつくって、差別化された製品を出した」ってニュースを見るけど、そんないい会社はたぶん全体の1%もないだろうな。取引先だって、皆苦労していた。何回「全部リセットできたらどれだけいいか」と思ったか。でも、社員を生活させなきゃいけない。クビにするわけにもいかない。
この会話の最後、彼は「自分はまた、会社員に戻るけど、この3つがわかったから、今度はもっと経営に貢献できると思う。また頑張るよ」と言った。とてもいい顔をしていた。