アクセンチュアPhoto:NurPhoto/gettyimages

コンサルティング大手のアクセンチュアが1月下旬、ロボット制御ソフトを手掛けるMujin(ムジン)との合弁会社(JV)設立を発表した。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、ダイヤモンド編集部が入手した、米アクセンチュアのジュリー・スウィートCEOや同社日本法人の江川昌史社長が社員らに宛てた内部メールの中身を基に、今後のグローバルの大方針について明らかにするほか、今回のMujinの例にも象徴されるアクセンチュアのJV戦略の深層に迫る。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

アクセンチュア「JV戦略」の狙いとは?
国内外トップの内部メールで深層に肉薄

 コンサルティング大手のアクセンチュアは1月下旬、ロボット制御ソフトを手掛けるMujin(ムジン)との合弁会社(JV)設立を発表した。

 Mujinは2011年創業の国内非上場企業だ。世界4カ国に拠点を置き、従業員数は350人以上。アスクルやファーストリテイリングなどと業務提携を結んできた。アクセンチュアとは19年に、AIやロボットを用いた倉庫オペレーションの自動化・可視化といった物流面での協業を発表。昨年9月には計123億円を調達し、欧米への事業拡大なども加速させている。

「製造・物流領域における現場のオペレーションデータや経営データをつなぎ、製造・物流企業のデータ主導型経営と自動化・省人化を加速する」。アクセンチュアとMujinのJV設立の狙いについて、プレスリリースではこのような説明がなされている。

 もっとも、このほど編集部が独自に入手した、上記発表後にアクセンチュア日本法人の江川昌史社長が社員へ発信した内部メールには、わざわざ太字で強調した部分が記載され、その狙いがより明確に記されている。日本の社会や企業が抱える課題への憂慮も踏み込んで示されており、同社が目指す方向性について、大局的な視点でひもとくのにも資するといえそうな内容だ。

 そもそも、米国上場の巨大グローバル企業であるアクセンチュアは、日本法人の従業員であっても、給与や人事などの面で海外動向の影響を受けやすい(本連載『【スクープ】アクセンチュアが基本給据え置きへ!コンサル絶対王者に生じた異変の中身』参照)。

 一方でアクセンチュア日本法人は、法人格の上では独立し、日本市場では2023年8月期まで10期連続で2桁増収を継続。アクセンチュアの中でも随一の成長市場であり、グローバルに展開する各地域の中でも、徐々にプレゼンスを高めてきた(『【独自】アクセンチュアがグローバル本社要職に日本法人幹部を起用へ、異例人事が象徴する日本の地位向上』参照)。

 そうした中で、国内外で競合するBIG4(デロイト、PwC、EY、KPMG)などと異なり、アクセンチュアで際立つ特徴の一つに挙げられるのが、近年は「日本法人」として買収や提携などを積極的に進めてきたことだ。22年終盤にビッグデータ解析などを手掛ける上場企業のALBERT(アルベルト)を買収。23年には、国内最大のPR会社ベクトルの子会社であるシグナルを傘下に収めた。

 買収だけではない。本連載記事『【独自】アクセンチュア&塩野義製薬、大型合弁会社の狙いが判明!「リストラ回避」の新スキームの全容』でも解説したように、アクセンチュアでは近年、事業会社と合弁会社を設立する例が相次いでいる。

 こうした狙いの深層に迫るべく、編集部ではこのほど、アクセンチュアのジュリー・スウィートCEO(最高経営責任者)が今期第1四半期(23年9~11月期)決算の結果を踏まえ、社内に発したメッセージも独自に入手。グローバル本社の大方針を示したその内容は、今回のMujinとのJV設立のみならず、今後の日本法人の動向を左右させかねない。

 次ページでは、アクセンチュアの国内外トップが社員らに宛てた通達の内容を明らかにしながら、今回のJV設立、さらにその先の同社の大戦略を読み解いていく。