この「うまくいった体験」は、「前回うまくいったんだから、今回もなんとかなるだろう」という処理可能感の「なんとかなる」感じにつながります。そのため、「うまくいったこと」より「うまくいかなかったこと」に目が行きやすい人は、「なんとなかる」感覚を育みにくいのです。

 結果、ますます「なんとかなる」と思える力が不安定になっていきます。

考え方や人とのかかわり方を変えていく

 一方で、「なんとかなる」と思える力が比較的強い人はどうでしょうか。

 同じような場面に遭遇したとき、「今日は予定が入っていて難しいです」「その仕事量をその時間内に終えることはできないと思います」などと言って、上司に交渉することができます。完璧主義ではないため、「上司の要求には応えられないこともある」と思っているからです。

 あるいは、引き受けて時間オーバーした場合でも、「突然の急ぎの仕事でも、ある程度は終えることができた」と、「できた部分」にフォーカスします。

 つまり「処理可能感」の高い人は、完璧主義ではないため、「うまくいった経験」や「できた部分」「なんとかなった出来事」のほうに注目するのです。

 処理可能感の高い人、「なんとかなる」と思える力の強い人は、いろいろな出来事を「なんとかなった」という成功体験としてとらえていくため、経験を重ねるごとに「なんとかなる」と思える力が強くなっていくのです。

書影『「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
舟木彩乃 著

 首尾一貫感覚のひとつである処理可能感は、適度な負荷のなかで「成功体験」を積むことで育まれるとされています。その「成功体験」を生み出すもとになるのが、「うまくいった経験」や「できた部分」「なんとかなった出来事」のほうに注目するポジティブな考え方、もののとらえ方といえます。

 さらには、「なんとかなる」と思えるためには、人の力を借りることや、知力やお金、地位などを活用できることも非常に大切です。「なんとかなる」「自分はなんとかできる」と思えるようになるには、自分ひとりの力でなくてもいいのです。同僚に助けてもらったり、上司の力を借りてもいいのです。あるいはお金を使って解決したり、地位の力を活用して課題を解決してもかまいません。

 自分がもっているいろいろな「資源」を活用することで「なんとかなる」と思うことができればいいのです。