「なんとかなる」と思えるようになるにはいろいろな方法がありますし、自分ひとりだけでがんばらなくても大丈夫です。前回お伝えしたように、「資源(人脈や知力、お金、権力、地位)」を活用しながら「なんとかなる」と思えればいいのです。処理可能感は、「自分やまわりを巻き込みながら乗り切れる」といったような感覚なのです。
また、把握可能感を高めることも処理可能感を高めるのに、とても有効とされています。なぜなら、人は、未知のものや得体のしれないものに、漠然とした不安を抱きがちだからです。「何度も経験のある仕事」と、「やったことのない仕事」だったら、どちらが「なんとかなる」と思えるでしょうか。もちろん、「何度も経験のある仕事」でしょう。
経験があって「だいたいわかった」と感じられる仕事のほうが、余裕をもって仕事ができますし、「この仕事はなんとかなる」と思いやすいのです。
「うまくいかなかった」ことにフォーカスしがち
では、「なんとかなる」と思える力の弱い人、「処理可能感」が低い人とは、どのような人のことでしょうか。
例えば、定時に仕事が一段落して、今日は早めに帰りたいと思ったAさんが帰宅しようと準備していたところ、突然、上司から「これ急ぎで!」と同僚数名とともに仕事をふられたとします。
同僚たちは断りましたが、Aさんだけ断れずに一人で対応しました。しかもAさんは、上司から言われた時間内に終わらせることができなかったため、帰り際、上司に平謝りしたそうです。上司に急ぎの無理な仕事を頼まれたうえに、一人で対応したのですから、何も終わらないのはAさんのせいではないのに、です。
このように、無理な仕事や無茶な要求をされた場合でも、「それに応えられない自分が悪い」といった態度をとるAさんのような人は、「処理可能感」が低い人といえます。Aさんのなかに、「相手の要求に完璧に応えなければいけない」という思考があるからです。
この完璧主義的な思考がクセになっている人は、相手の要求に“完璧に応えられなかった”部分に大きくフォーカスしがちです。そのため、「うまくいった」という成功体験を感じにくいのです。