JALPhoto:PIXTA

2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、円安や物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はANAホールディングス、日本航空の「航空」業界2社について解説する。(ダイヤモンド編集部 笠原里穂)

航空2社は2桁増収
JAL衝突事故の影響は?

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の航空業界2社。対象期間は2023年8~12月期の四半期(2社の対象期間はいずれも23年10~12月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・ANAホールディングス
 増収率:15.6%(四半期の売上高5409億円)
・日本航空
 増収率:10.7%(四半期の売上収益4284億円)

 航空業界2社は、いずれも前年同期比で2桁増収となった。 

 新型コロナウイルス感染拡大の影響が始まった当初、航空2社はいずれも甚大な打撃を受け、業績が大きく落ち込んでいた。一方で、2023年5月には新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に移行した。これによって各種規制が緩和され、旅客需要が堅調に回復している。

 加えて、円安の影響もあり、インバウンド需要が拡大。23年10月の訪日外国人数は、コロナ前の19年の同月実績を超えた。こうした回復も、両社の業績好調を後押しした。

 両社の売り上げはどのように推移したのか。次ページでは時系列の推移を紹介する。

 また、日本航空に関しては1月2日、羽田空港の滑走路上で同社の旅客機と、海上保安庁の航空機が衝突、炎上する事故があった。今回取り上げる23年10~12月期の業績にはこの事故の影響は出ないが、24年3月期通期ではどうか。同社の決算発表で説明した見通しについても併せてチェックしてみよう。